真っ白いシーツの上に横たわっている君を俺は夢中で貪る。
細い腰を掴んでひたすら揺らし、秘裂からは何度も放った欲望の白。
自分の感情に比例した多すぎる量に、収まりきれずこぷりと時折零れる。

――俺を柔らかな壁でぎゅうっと締め付けて、こんなにも受け入れているくせに

溢れさせるその様子はまるで拒まれる自分を連想させ、
たまらず無理やりに自身を使ってまた中に押し込もうとする。
……が、それは結果的にさらなる快楽を自分にもたらす事になり、
また吐き出す。繰り返す。
　
――きっと気持ち良すぎる君のせいだ
　
俺はこの娘の欲情した女の顔なんて見た事がない。知らない。

――だからこれは夢

快楽のあまり息も絶え絶えになりながら、その口から俺を貪欲に欲しがる卑猥な言葉。
離したくないと腰に絡まるスラリとした脚。
下半身が蕩け落ちる様なこの感触も、全て己の願望。
自分の色で染めたくて、全てを侵食したくて、中からも外からも白く白く白く……

――全部俺の色に染まってしまえばいいのに

夢は素直だ。
やがて本当に染め上げられた君は、とても穏やかな笑顔を浮かべたかと思うと、
真っ白でとても美しい蝶に姿を変えてしまった。
羽を広げてシーツの色に溶けて、飛んで部屋の色とも同化し、
ついに俺の目で確認することが出来なくなってしまう。
そして、全てが真っ白になりその世界が自分だけになり……


そこで目が覚めた。

・
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「なんだあの夢……？」


隣のベッドに目を向けると、雪花姿の色鮮やかな彼女。
男のそばで寝る危うさを知らない無垢な表情で眠る。
起こさぬようにそっと近寄ると、滑らかな曲線を描くいかにも柔らかそうな頬で、
思わず唇を寄せたくなるのを堪えて、指でするりとひと撫でする。
見た目は違えど、寝ている時の表情は限りなく普段の最上キョーコだ。
思わず愛おしい気持ちを込めて、目を細めじっと眺める。

「君さあ……あの時、本当に危なかったんだよ？」

全てを捨てて、目の前の甘く魅力的な毒を食らおうとしていた自分。
押さえ込んでいた蓋がゴトリと音を立てて開いた瞬間、全てを放棄してこの娘を抱こうとしていた。

でも……


「抱かなくてよかったよね……」


不意を突かれたと言っても、男である俺の方が力がある。
無理やりという事も実際には可能だった。
でも、出来ることなら、この娘に触れる気持ちは混ざりのない綺麗なものでありたい。
純粋に愛おしいという気持ちだけで君におぼれたい。
そして、願わくは……

「そんな日がくると良いな……」


誰に聞かせる訳でも無く独り呟く。


「君の事が欲しい、
　もし、いつかそう告げたら……俺の気持ちを受け止めてくれるのかな？」

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先ほど見た夢。
俺の色に染めたと思ったのに、君は結局消えてしまった。
自分勝手に色を付けるという考え自体が、そもそも間違いだったのかもしれない。
それが出来るのはこの娘自身だけ。
無色透明の君は、その色を自ら変えるたびに魅力的になり、捕獲するのが難しくなりそうだ。
そして、本当は……


――染まりたいのは自分の方なのかもしれない


首には刻まれた所有の印。君がつけた赤。
愛おしい気持ちを込めて、その時の感触を思い出しながらそっと手で触れる。
いっそ消えなければ良いのにと思う。
君の存在を感じる事ができるそれが少しでも長く残りますように。
それが無理なら、

「ねえ、お願い。これが消えたらまた刻んで？」


君はまだ眠りの国のお姫様。
……目覚めるまできっとあと少し。