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姑息とうわて (ド素人のスキビブログ18禁・氷樹さん)

最上キョーコは彼が苦手だ。


キョーコの勤務先は、株式会社LMEグループが経営するホテルの一つにあった。
東京都内にあるにもかかわらず閑静な高台に位置し、
落ち着き払った高級感は抜群で権威ある格付け機関から最高位の評価を得ていて、
開業以来世界をもてなすホテルとして人気を博している。
その有名なホテルの総支配人である彼は前任者の勇退に伴い数ヶ月前に赴任してきたのであった。
副支配人が格上げになるわけでもなく、業界で名も聞いたことがない青二才。
況してや、このLMEグループの社長の秘蔵っ子の一人であると噂されていた為、
彼は赴任前から多少妬まれていた。
ただの寵愛を受けた役立たずであれば、他の従業員たちから煙たがられたろうが
業績も好調で一年先まで予約が埋まっていると言う人気の上に胡坐をかくことなく、
常にワンランク上の品質・サービスの向上を模索し、
また従業員が働き易い環境を整えることも大切だと寸暇があれば小さい仕事でも
率先して取り組む姿勢は好評で、今やすっかりと現場に溶け込み頼りにされる存在へとなっていた。
加えて、モデル……世界トップクラスのモデルも顔負けの凛々しい顔立ちで190cmを超える
逞しい体躯を持つ美丈夫ともなれば更にケチの付けも無く、
故に彼は特に女性従業員や女性客から圧倒的な支持を受けていた。
それは、彼―――敦賀蓮を目当てに泊りにくるセレブがいるほどだった。
だからと言ってその懇意に応えるわけではなく、さらりと躱して不快感を与えない。
どんな人間(ひと)ともそつなくこなす彼。
勿論それはキョーコに対しても同じなのだが、キョーコは何故か彼の気持ちの機敏。
特に怨・恨・怒(ブラック)オーラを分ってしまい、
彼が笑顔で仕事に取り組んでいても実はもの凄く機嫌が悪いのだとか、
かなり怒っているのだとかが手に取るように分り、
一人顔色を青くしながら仕事のサポートをすることがよくあったので
何となく苦手意識を持ってしまったのだ。

そして、今、その機嫌の悪さを奇怪なアンテナで感じながらキョーコは総支配室の扉の前に立っていた。
『昨日から1003号に泊まられているお客様の担当をしたのは君だったね。
ちょっと聞きたいことがあるから総支配人室に来てもらえないか?』
予定外の仕事を終え、片付けをしている最中に呼ばれた電話。
その声音からキョーコは蓮が何かに対して酷く怒っているのだと感じた。


―――1003号のお客様のこと? 大丈夫、アイツには何ひとつ不備など犯していないはずだ。


キョーコは大きく息を吐いて重厚な扉をノックした。




「どうぞ」




すぐに蓮、直々に扉を開けられキョーコは一歩後退るほど面食らった。
いつもであれば彼の秘書、社倖一がそこに居て扉を開けてくれるのに。




「すみません。 ありがとうございます。 あの社さんは?」


「彼には、探し物をして貰っているよ」


「そうですか」




社が居ないということがキョーコを更に落ち着かなくさせた。
誰に対しても人当たりが良い社倖一と言う男は、
キョーコが蓮を苦手としている雰囲気を感じ取ってさりげなく二人の間に入り、
潤滑油的な役割をこなしてくれていたので
キョーコがこのホテルで信頼を寄せている人間の一人でもあった。




「奥へどうぞ?」




誘われる儘、キョーコは毛足の長い絨毯の上を歩く。
にこやかに微笑む蓮からは案の定怒りのオーラが醸し出されていた。
頑丈な扉が閉められ、がちゃりと鍵のかかる音が響き、
キョーコは重々しい雰囲気に息を飲む。
蓮は上質な生地のソファに長い脚を組んで座り、ちらりとキョーコを見た。




「1003号のお客様。安芸祥子さまと不破尚さま。
このお二方は、ここ1~3ヶ月の間頻繁に泊まって頂いているお客様なんだ」


「はい、存じています」




キョーコは学生の頃からバイトでこのホテルに入り、
余りの働きのよさに先代の総支配人から認められ、卒業と同時に勤めるよう勧められたのだった。
この少女は恐ろしいほど接客業に長けていてフロント対応は勿論のこと厨房業務にと幅広く、
しかも完璧にやってのけるので蓮と同じくらいに一目置かれる存在となっていた。
なので当たり前のように馴染みの客はから新規の客のあらかたは覚えていた。




「うちは、手前味噌だが客室は一年先まで予約で殆ど埋まっている」


「はぁ……」


「要は、新規のお客様は簡単に泊まれないということだ!!」




曖昧に相槌を返すキョーコに痺れを切らしたように蓮が声を張り上げた。




「……心苦しいですがそうですね」


「なのに彼ら泊まっているんだ」


「はい?」


「それもうちの取引先や贔屓先のコネを使ってね」


「はぁ」


「しかも帰り際や後からくだらない言い掛かりを付けてくる」


「なんですって!!」


「今までそれは俺や社さんで対処してきたんだが、今回は君を出せと言ってきている」


「へっ!?」


「君は1003号室を掃除したね?」


「はい、1003号室のお客様から部屋を汚したので片付けてくれと頼まれましたから」


「君が帰った後、大事なものが無くなったと言ってきた」


「はぁ!?」


「パソコンに入れておいたmicroSDカードが君が帰った後に無くなったと言ってきた」


「そっ!! そんなこと!! 他人のものを盗るなんてこと私していません!!」


「今までも君への言い掛かりは多少あった」


「えっ?」


「一体どういうことだ? 何故彼らは君に固執する?」


「……っ、分りません。そんなこと……」




虚を衝く蓮の詰問にキョーコは言葉を詰まらせた。




「ふぅん……ま、いいよ」


「それより私1003号のお客様の所へ行ってきます!!」


「ダメだ!!」




今にも駆けだしそうなキョーコの腕を掴み蓮はその行動を制した。




「どうして……ですか?」




キョーコは茶色の大きな目を不満一杯にして蓮を睨み付ける。




「きちんと検証してからでないとね?」


「検証?」


「microSDカードはとても小さいものだね?」


「はい、指先くらいですね」


「服や色々な物の中に隠せるね?」




蓮の剣呑な言い方にキョーコははっと顔を上げた。




「わっ、私を疑っておいでですね? ……分りました。持っているもの、服の中全部お見せします!!」




キョーコは自分を信じてくれていると思った蓮から疑いをかけられたことに激怒し、
顔を真っ赤にしてジャケットを脱いで逆さにして振った。
館内用の携帯電話とハンカチやティッシュが床にばらばらと散らばった。
それでも物足りないとキョーコはスカートのポケットを探ってロッカーの鍵をぶち撒けた。




「私が持っているものはこれだけです!! お客様が無くされたmicroSDカードはありますか!?」




怒り心頭で震えるキョーコの声に蓮の冷徹な声が被る。




「最上さん、microSDカードはとても小さいものだよね?」


「それが何か!?」




何度同じ事を聞くのだとキョーコは目尻を上げ語気を強めた。




「君にはまだ隠せるところがあるんじゃないか?」


「えっ? ……っ!!」




蓮の言わんとしていることに気付きキョーコの顔色がさっと変わった。




「あ、あとは、ふっ、服と下着だけです!! 何も、何も持っていないし隠していません!!」


「それを判断するのは 俺だよ」




真っ赤な顔から一転蒼白になり、頭を振るキョーコを蓮が高い位置でその身体を値踏みするように眺めた。
逃げなければと思うのにキョーコの体は蛇に睨まれた蛙のように動けずにいた。







「ぃっ、いやぁっ!! 止めて……ください」




柔らかいソファに組み敷かれキョーコは震える声で懇願した。




「最上さん、女の子って色々隠すところがあるよね?」




キョーコの細い腕を頭上で一纏めにして、
白く清潔感溢れるブラウスのボタンを外しながら蓮は抑揚なく口を開いた。




「隠していません!! 隠していないから止めっ……ああっ!!」




布で隠された透き通る白磁の肌と、控えめなふたつの膨らみを隠す清楚な下着が晒されキョーコが羞恥に声を上げた。




「先ずはココかな?」




蓮の指先が清楚な下着のレース目に沿って頂きを刺激するように何度も往復する。




「ぃっ!! いやぁ……あ、あ、っ!! ぅん!!」




怒りに震えていたキョーコの身体は恐怖のそれに変わりつつあった。
何とか逃げ出そうとしても蓮の大きな体に跨られては捻ることも抜け出すことなども叶うはずなく、
そして何より蓮の冷淡な表情がキョーコの不安に拍車を掛けていた。




「ほら、この中にコリコリとしたものがあるよ? 何を隠している?」


「やっ!! 何も、なにもありませ……!!」




冷や汗が滲む華奢な背中に大きな手を差し入れ、器用に清楚な下着のホックを外す。
蓮はキョーコがこういう行為を恥ずかしがることを悟って
態とゆっくりとそれを頭上の手首まで移動させた。




「ドコに隠した?」




ツンと尖ったピンクの頂きに軽く触れるとびくり跳ね上がる痩躯。
些細な指の動きにも反応するキョーコに蓮は漆黒の瞳に情欲を滲ませていく。




「あああっ、やめ、やめ……てっ!!」




硬く凝った先を弄られる度に涙をはらはらと流し、キョーコが細い腰が拙く揺らす。
蓮は切れ長の目でおやおやと暫し見つめていたが、やがてふっと口の端を上げて、
誘いかけるように色付くキョーコのそれを口に含んだ。




「ひゃっ!! や……やめ……しはい、にんんんっ!!」




硬さを増す乳首に舌を搦めると絹のような肌がざわりと粟立った。
しかし直ぐに全身を桃色に上気させるところから嫌悪感からくるものではなく
快感が走っているのだと蓮は予測した。



―――快楽にかなり弱い。



蓮は目を細め、キョーコの弱点をねっとりと舐め吸い上げる。
時折、張りの良い乳房に押し付けるように愛撫すると
キョーコは更なるそれを強請るように背中を撓らせた。




「ココにはないのかな?」




蓮は、満足したように端整な顔を上げると膨らみの側へちゅっと赤い華を散らしていった。




「ぃっ……な、にを?」




思わぬ痛みにキョーコは声を上げた。




「ココまで調べたって印。 俺は忘れっぽいからね……ああコッチも調べておかなきゃね」




にやりと悪辣な笑みを浮かべた蓮は、何の愛撫も受けていないのに恥ずかしいくらいに尖った
もう片方の乳首を摘んだ。




「んんんっ!!」


「すごく敏感だね……君にこんなことをしたって分ったら彼はどんな顔をするんだろうね?」


「ああああっ!! ぅ、やぁっ!!」




複雑な面持ちで呟かれた蓮の独り言はキョーコの嬌声に掻き消えた。





赤い刻印が白い肢体の彼方此方(あちこち)に浮かび上がる。
初めて受けた濃厚な愛撫にキョーコ羞恥は限界まできていて
耳の奥で聞こえる鼓動が変な音に聞こえるほどだった。



―――恥ずかしいのに気持ちいい。



男の人に裸を見られ辱めを受ける羞恥。耐え切れないと思うのに
身体の奥の方から込上げるアツイモノ……今はこっちのほうが辛く、
キョーコはこんなふしだらな自分が疎ましかった。
そんなキョーコの状況を見透かしたように、
蓮は無意識にもじもじと摺り合わせるキョーコの太腿の間に手を差し込んだ。




「ねぇ、最上さん。身体……特にココ辛いだろう?さっきの質問に答えたら先ずイカせてあげるよ?」




甘い教唆とともに太腿の付け根に手を伸ばすとキョーコは改めてじたばたと暴れ出した。




「さっ、触らないでっ!!」




「やっぱり強情だね。 でもね、余り強情だと損をするよ?」




蓮は言うがいなや風合いのよいスカートとぐっしょりと濡れて役目を果たさなくなった
清楚な下穿きをするりと剥ぎ取った。




「いやぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


「すっごいね。 嫌なことされているのにこんなに感じているんだ?」




初めて他人に下半身を晒した羞恥と、蓮の嘲るような口調にキョーコの頬がかあっと熱くなる。
男らしい指がキョーコの秘所でくちくちと淫らな音を立てて動き出すと
キョーコは卑猥な水音から逃げるように白い歯を食い縛った。




「ほら、こんなに―――させてイキたいだろう?」


「いっ、いくってどこ……ゃっ!!」


「……? ま、いい。最上さん、もう一度聞くよ? 彼らは何故君に固執するんだ?」


「わかっ……本当にわからなっ……です。だからやめっ!!」


「……っく、仕方ないね」




涙を流しながら小さい頭を左右に振るキョーコに蓮は仕方ないと零しながら指先についた蜜を舐めとった。
目を丸くするキョーコを他所にその端整な顔に困惑の色一つ見せず、
蓮はジャケットのポケットからあるものを取り出した。




「本当は使いたくなかったんだけどね?」


「なっ……?」




君が悪いからだよと暗に言われ目の前に突きつけられたモノ。
形状こそ小指の先くらい小さくて可愛いらしいが、冷たそうな金属質が
まともなシロモノでないことを無垢なキョーコに容易に想像させた。




「ひっ!! やぁっ、いやぁ!!!!」




蓮はキョーコの溢れ出る蜜をそれに塗し、硬い蜜口へと押し当てた。




「もうちょっと苦しんでもらうよ?」


「痛っ!! いたっ!! やめてっ、ぁぁぁっ!!」


「……? キミさ……ローター使ったことないの?」


「ローっ!? ななななっ、ああああっ……ゃっ!!」


蓮が手元のスイッチを入れると痛みに顔を歪めていたキョーコの顔色が一気に高潮していった。
あらぬ場所の刺激にキョーコが広いソファーの上でのたうち始める。




「ゃゃゃゃっ、抜いてっ……ぬいてくださっ……!!」




額にしっとりと汗をかき、激しく上下する胸を気持ち程度に隠し、潤んだ大きな目で蓮を見つめるその姿は
平素のキョーコから考えられないほど妖艶だった。
恐らく百戦錬磨の高級コールガールですら持ち合わせれない魔性に蓮はごくりと喉を鳴らした。




「自分で抜いてごらん?」




蓮の冷酷な指示にキョーコは震える指先で自分を犯す淫具に手を伸ばす。
蜜に滴るその紐に指を引っ掛かる。
が、その僅かな衝撃にさえびくりと身体を跳ねさせた。




「ひゃっ!! ……ぁぁぁっ、むり……で……」




ぶるぶると震える白い太腿が、与えられる快感の強さを示していた。
綺麗にくびれた腰の奥に滞る熱の解放の仕方を知らないキョーコはただただ極限を彷徨い、
ぎこちないながらも腰を動かし啜り啼いた。
キョーコの艶かしい姿態に蓮の我慢もまた限界に近付いていた。
蓮は触れたら痺れるような淫猥な色気をたっぷり含んだ溜息を吐いてキョーコを見つめながら立ち上がる。
オーダーメイドの上質の上着を椅子に投げ、かっちり締めたネクタイを解いていく。
糊の効いたシャツのボタンを外すその姿はキョーコのそれほどではないが
夜の帝王と言う形容詞が相応しいくらい凄艶で雄のフェロモンを溢れさせていた。




「色々訊きたいことはあるけど俺ももう限界なんでね、コレ抜かせてもらうよ?」




蓮はスラックスのフロント部分を寛げながら未知の快楽に打ち震えるキョーコの側に立つと
爪先までピンと伸ばし細かく痙攣する程よい筋肉のついた腿の間に大きな手を差し込み、
キョーコを苛む淫具を取り出した。




「まっっっっ!! あ、あ……あああああっ!!」




熱の解放を待ち侘びた初心な身体は乱暴な衝撃で絶頂に達した。
初めての快感美にキョーコの身体が陸に上がった魚のようにびくびくと跳ね上がる。




「あれ? イっちゃた? もうちょっと耐えてもらう予定だったのにね」




蓮の嘲笑も息を乱したキョーコには届かなかった。
蓮はぐったりと四肢を投げ出したキョーコのしなやかな脚を幅広い肩に乗せ
はち切れんばかりにそそり立つ灼熱の塊をキョーコのしとどに蜜を溢れさせる陰部に押し当てた。




「挿れるよ?」


「―――っ!! 痛っ!! いたい!! 痛いです……やめ、てっ!!」




絶頂の余韻に浸っていたキョーコの意識は身を凍らすような痛みに現実へと引き戻される。
苦痛にがくがくと震えるキョーコを見て蓮は驚いて訊ねた。




「……っ、何でこんなに狭い……最上さん……キミ、もしかして初めて?」


「こ……な破廉……恥なこと、したこと……ありませ……っ」


「キミ……不破の彼女、じゃなかったのか?」


「おさななじみ、です」


「えっ?」




キョーコは痛みを堪えて口を開いた。




「幼馴染で小さい頃からアイツの実家の旅館を手伝っていたんですけど、
最近アカトキグループの傘下に入ってから経営が変わって……
どうも好きになれないので辞めてこっちに出てきたんです」


「それでキミを取り戻そうと?」


「ここの帳簿と顧客情報を持ってくればまた雇ってやると言われました」


「それで口が重たかったんだね?」


「……すみません」




全てを話し終えキョーコは隠したかった秘密を守りきれなかったことに臍を噛んだ。




「こっちこそごめん……
キミが不破の彼女で別れが拗れて
その腹いせに俺たちを巻き込んでいるなんて勝手に勘違いしていた」


「そんな……!!」


「それにキミの色々な初めてをこんな形で奪ってしまって」


「―――っ!!!! だっ、だから早く退いてください!!」




ありのままの現状を言葉で突きつけられキョーコの全身が真っ赤に染まる。
その仕草に蓮は神々しいまでの笑顔を浮かべた。




「最上さん」


「ははははい?」


「ごめんね、俺すごく嬉しいんだ」


「嬉しい?」


「キミが不破のものじゃなかったことそして初めてが俺だってこと」


「へっ!?」


「大好きなんだよキミが……だから不破と関係があると思って嫉妬したんだ」


「すっ!! すすすすすきって? わっ、わわわわわわたしをっ!?」


「ずっと好きだった。
なのにキミは気付いてもくれなくって社さんばかり頼るし、
訳の分らない奴は出てくるしちょっとは俺の身にもなって欲しい」




俄かに頬を染めて拗ねる蓮にキョーコの胸が高鳴った。




「だっ、だだだだだだって!!」


「ね、最上さん。 順序が逆になったけど、俺の恋人になって? 大切に大切にするから」


「なってって……あぅっ、な……っで大きくなっ……ゃっ、そこっ……さわらない……で」


「ごめんね、嬉しくって止まりそうもないんだ。
もうちょっと待っているから……今度はたくさん気持ちよくしてあげるよ」


「もうちょっとって……あぁっ!!そんなところっ!!」




蓮はふたりを繋ぐ場所の薄い茂みに手を伸ばし、まだ熱の燻る秘部に再び火を点すように
幾重の花びらに守られた花芯を探り当てた。




「キミがここも好きそうで良かった。 ほらまたすごく濡れてきたよ」


「ぁぁぁっ!! 言わない……そんなこ……っ!!」


「少し動くよ?」


「ゃ……めっ、いた……ぃっ!!」


「っ、ごめん……本当にごめん。 もうちょっとちから抜いて?」


「できな……ぃゃっ……あああっ!!」




快楽と痛みに交互に襲われながら混乱するキョーコに
蓮は尖った儘のキョーコの胸の頂きをざらりとした舌で舐め上げた。
綺麗に浮かび上がる鎖骨にキスを落とし、曝け出された細い首に唇を寄せる。
耳の裏側や覗き見なければ気付かない処に一つ。またひとつと所有の印を刻んでいく。




「ああっ、しはいにんっ!!」


「違う。 違うよ、名前呼んで? おれの」


「なま、ぇ?」


「そう、呼んで?」


「つ……るが……さん?」




口に手を当て、もごもごと恥ずかしそうに言葉にするキョーコに蓮は楽しそうに目を細めた。




「惜しい。 下の方」


「蓮……さん?」


「よく出来ました、キョーコちゃん」


「ぁぁっ、やん、また大きくなっ!!」


「ごめん……かなり嬉しくって。 大好きだよキョーコちゃん」




キョーコの腕を首に回し、その痩躯を強く抱きしめると
ふたりの接合部分が深まりキョーコがうっと呻き声を上げた。
蓮は慌ててキョーコの細腰を抱え直し、男らしい指先をキョーコの薄い下生えへ潜り込ませる。
初めて男を受け付けたのならこのセックスはキョーコにとってかなり辛いだろう。
しかも勝手に嫉妬して勘違いしていた蓮は自分を受け入れる場所の愛撫を機械に任せ疎かにしていた。
ならば愛しいこの子がこの行為に慄くことなく、膣への刺激ではなくって
初めてでも快感を得易いクリトリスを弄ってやるべきだろうと蓮はゆるりと腰を回しながら
指先で慎重にその花芯に愛撫を加えていく。
蓮が突き上げる度くぷっと水音が立ち、快楽に弱い身体は些細な刺激にあっと言う間に熱を持ち始めた。




「ひゃぁっ!! れんさっ……ぁぁっ!! やめっ!!」




上がる声に最早痛みに苦しんでいる様子はなく
健康的な頬を更に薔薇色に染め快楽の涙をポロポロと流し、腰を揺らめかせる姿に蓮は思わず見惚れた。




「可愛い。 こんなに可愛くっていやらしくって……どうしよう止まらなくなりそうだよ俺」




腰を引こうとすると追うように搦み付くキョーコの蜜壷の蠢きに今度は蓮が小さく呻いた。




「キョーコちゃん……悦くなってきた?」


「わから……わからなぃっ、ああああっ」


「俺を捉まえにきて、すごいイイ……こんなの初めてだ」




快楽に眉根を寄せて端整な顔を歪める蓮の唇にキョーコがほっそりとした指を伸ばした。




「わたし、イイんですか?」


「ああ、すごく……キョーコちゃんは?」


「まだよく分らないんですけど蓮……さんが気持ち良ければ私もイイかなって……」


「相変わらず優しいね。そんな全部が好きだから気持ちイイんだよ? 愛しているキョーコちゃん」


「わたしもです……あっ、また!!」


「ヤバイ。 まじめに止まらないよ俺。 キョーコちゃんの所為だからね」


「ええっ!? ああああっ、やぁっ!! ああああああっ!! れんさ、んんっ!!」




蓮は再びキョーコの膝を折り曲げ腰を激しくぶつけた。
ぱんぱんと肉のぶつかり合う音と蓮の荒い呼吸。
キョーコの甲高い嬌声が贅沢な調度品の間を駆け抜けていく。
濃厚な愛撫と猛々しい律動に導かれキョーコは二度目の絶頂を迎えた。
恍惚とする表情を見届けて蓮も追いかけるようにキョーコの中で果てた。






先ほどの情事が嘘のよう綺麗に身支度を整えた蓮が1003号室のドアを恭しくノックする。
部屋の主は来訪者が目的の人物でなかったことにチッと軽く舌打ちをして蓮を中に招き入れた。




「キョー……さっきの奴どうしたんだよ? 俺は掃除した女を寄越せって言ったよな?
……ったく、TOPがきちんとしていないから下の奴も手癖が悪くっても構わないと思っているんじゃないか?」




挑発するような尚の言い方に蓮はすっきりとした顔を曇らせることはなかった。
我ながら現金だなと蓮は腹の底で笑いを噛み締める。




「お言葉ですが不破さまの紛失品。不破さまの思い違いかと存じますが?」




尚を正面に見据え、断言した蓮に焦燥の色を濃くした眼差しが集中する。




「俺たちが嘘吐いていると言いてぇのか?」


「いいえ、思い違いかではないかとお訊ねしているのですが?」




じろりと睨みつけてくる尚に蓮は更ににこやかな笑みを浮かべた。




「あの女が出て行ったら無くなっていたんだよ!! 人がちょっと目を離した隙に!!」


「不破さまからご連絡頂き、最上には何処へも寄らず私の元へ来るように指示しましたので
途中隠すことも難しいと思います」


「でも、あんな小っせえモノ……」


「ええ、大変小さいものですので調べるのに一苦労しましたよ」


「えっ?」


「見落としが無いように隅々まで入念に持ち物検査をしました」


「え゛え゛え゛え゛え゛!?」


「いやあ、恋人や無ければセクハラで訴えられますよね?」


「なっ、ななななっ!! こここここいびとぉぉっ!?」




今し方の行為を思い出したようにニヤリと笑う蓮に尚はわなわなと震えだした。




「古風な彼女は伴侶以外に身体に触れることは耐えられないというので
結婚を申し込んで深いところまで探すのを了承してもらいました。
なかなか申し込む機会を逸していたので本当に良いタイミングでした」




「けっこ……ん?」


「ええ、先ほど婚約いたしまして、幸せとともに重圧を受け止めております。
しかし、なんて言うんでしょうね……
色々な所を探しているうち彼女の可愛さに思わず目的を忘れるところでしたが
隅々まで確認した結果それらしきものを持っていませんでしたのでご安心くださいませ」


「おおおおおおおい!!」




唖然とする尚と祥子に蓮は惚気るように経緯を語った。




「ああ、私としたことが大事な事を忘れておりました。
最上が片付けましたゴミの中も確認しましたところ紛失品に当たるようなものは無く
使用済みの避妊具しか出てこなかったようですが、一応確認の為お持ちしましょうか?」


「なっ!! ……ちっ、もう良いよ!!分った……こっちの勘違いだった。下がってくれ」


「畏まりました。失礼致します」




ぎりぎりとした歯軋りが聞こえそうな尚に蓮は礼儀正しく一礼すると
閉じかけた木目が美しいドアに手を掛けた。




「不破さまにはもう一つお伝えすることがございました」


「あんだよ?」


「最上は当ホテルの大事な従業員であり、私の大切な婚約者なので
これ以降の手出しがあれば然るべき対処をさせて頂きますのでご了承くださいますように。
では長らくのご懇意誠にありがとうございました。不破さまのご健勝とご活躍祈念しております」




言葉遣いこそ丁寧だが、二度と来るなと言う射(い)殺すような目付きに
尚と祥子は一言も返せずドアが閉まるのを見送った。




「うっ……わ、怖ーい!! 怖いな蓮くん。闇の国の住人さん呼んできちゃダメじゃない~
ってもあからさまなキョーコちゃん狙いをされちゃ黙っていられないよね。
でも、クワバラクワバラ」




妙にシニカルなテンポで言い放ち、エレベーターの扉を支えながら蓮を待っていた男は
何処ぞの猫型ロボットのような笑みを浮かべて閉まるボタンを押した。




「社さん……随分嫌な笑い方ですね。
それに何ですか闇の国って、俺は普通にこのホテルと従業員を守ろうとしたまでですよ?
ああ、探し物ありがとうございました。お陰で奴らの鼻明かしてやることが出来ましたよ」


「イイってことよ!! ちょうど収集車が行った後とキョーコちゃんがゴミをきちんと纏めてくれてたから
探せたけど、俺もまさかあんなものが出てくるなんて思わなくってさ、思わず“げっ!!”って叫んじまったよ。
それはそうと、キョーコちゃんどうよ?」


「なにが……です?」


「余りにも辛そうな様子だからさ、薬か何かでもって言っても頑としてドア開けてくれないんだよ」


「ああ……そうでしょうね。 
動けないって言っていたし、俺の奥の部屋で寝ていてもイイって言ったのですがね
強情……ってより恥ずかし過ぎて会わす顔が無いんでしょうね」


「は、恥ずかしいって、その……キョーコちゃんずっとあんな風だったし、
お前の気持ちも分らないでもないんだけど、きちんと合意の上で進んだんだろうな!?」


「ええ、勿論ですよ。 それで社さんにもう一つお願いがあるのですが……」


「何だよ、改まって?」


「この書類の証人になって欲しいのですが」




ひらりと差し出された紙切れを見て社が驚愕の声を上げた。




「えっ? 婚姻届なんていつ取ってきたのよお前!?」


「さっきダウンロードしたんですよ。
やっぱりこういうのは早い方がイイでしょうし。
もう一人は社長にお願いすれば大丈夫ですかね?」


「う、うん……ってか早過ぎないか? これ……」


「何言っているんですか!? うかうかしていたらまたドコかの馬の骨が出てくるでしょう!!
知ってます? このホテルの中でも密かに狙っている輩多いんですよ?」


「よく気が付くし、素直だしな」


「彼女の初めてをタテにしてでも決めてみせます……子どもが出来ていれば確実なんですがね」


「蓮、お前な……」




いつも冷静なオトコの意外な一面に社はあんぐりとその口を開けた。
ちょっと自分勝手で空恐ろしい内容をつらっと言ってのける蓮の
余りにもヘビー級な愛情を突きつけられるキョーコに心の中で同情した社であった。