To be my Grace No. 12 (mimi's world・美海さん)
※文章に以下の描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
・妊娠(カイセツ後)
・流血表現(撮影シーン)
・微桃(撮影シーン)
「 今の見てた? 」
うん。と頷いたキョーコ。髪がシャラッと音を立てて、さっきの埃まみれのクレオパトラでは無い、綺麗に化粧された女王のクレオパトラが微笑んだ。
埃まみれの時は、お目目パッチリお人形だったけれど、今は切れ長のデキル女に成っていた。
どこから?と話しながら二人とも・・・
俺は鎖帷子を解いてもらいローマ軍服にされて、頭に月桂樹を着けるのにはメイクさんが背の高い俺の頭に届かないので中腰に成っていた。
京子は白いシフォンのガウンを着せてもらっていて、イシス結びと言われる、なんのこっちゃ分らない結び方で金の紐を胸の下で結ばれていた。
妊娠して胸が張ってきた彼女は、一週間前はピッタリだったクレオパトラの宝石がたくさん付けられたブラの様な衣装・・・今日は胸が盛り上がっていた。
裾にもたくさんのビーズが施されたドレープ付きのそのガウンを羽織っていなければ、
( ちょっと・・・誰にも見せたくない。 )
とは、グラマラスに成っている自分の彼女の姿。
セツカちゃんの衣装の時も、おっ!っと・・・谷間を思わず見てしまったけれど、
衣装さんだけには絶対伝えておいた方がいいと、サイズがどんどん変わる彼女も納得。
自分でも苦しいらしい。
ふ~っと言いながら、胸に押されて下がってくる衣装の肩紐を上に持ち上げた。
でも、切れ長の蒼翠の瞳の出来る女、グラマラスな雰囲気がすごく魅力的で、
それがクレオパトラっぽいとは、自分がしてしまった間違いが良かったのかどうか・・・
仕事を辞めなくてもいい京子も久遠だとばらして気が楽に成った俺にも、全てが好転に成っての今なら思える・・・良かったかもしれないって。
_____ 監督。京子さん来ましたよ。
もしもし・・・と肩を叩かれている監督は、まだ左斜め上を見詰めたままだった。
そうだな、それじゃ・・・ブツクサ言いつつ、考えが纏まってきた様だった。
さっきのシーザーの場面さ、フォーカス中心まで寄せて・・・
観客がシーザーが見ている目線も入れよう。それで、観客の目線がシーザーの目線で・・・
進む足元の雲海を手前に立体でIMAX用に画面から出して行く感じ・・・にしようと思う。
うん、そうしよう、そうしよう。
と・・・そっぽを向いて一人でウンウン頷きながら、そちらに誰も居ないのに話す監督。
一体誰に今の話していたのだろうとは、スタッフ含め ここに居る全員が思っていた事だった。
「 あっ。じゃぁ・・・」
ポンと手を打ち、そう言いながら人差し指を一本上げて、振り向いた監督。
「 あれ? 京子さん何時 来ました? 」
自室の小部屋から、ひゅるっと戻ってきたらしい監督に、その気持ちが分るのか
妄想小部屋プロフェッショナルのキョーコが返したのは・・・
「 今、満月の裏側から戻ってきたところですよ。 」
あ~、そうそう。満月ね~!と監督は、今のクレオパトラ目線の映像を見ていたのかどうなのか定かでは無いけれど、これから入る結いの儀も・・・
満月の夜にしか、プトレマイオス王族の婚礼は行わないと云う事。
満月ですよ。早くしないと欠けますよ~。とキョーコは続けて言い、早く次に進みませんか?と促してくれた。
「 それでは先に、二人が入るCGからお見せしましょう。 」
雰囲気を出して欲しいと、ただのブルーバックでは用意不可だった物を見せたいらしい。
その画像を見て、うわ~ぁ、きゃぁ~ぁっとキョーコがラブリーな声を上げた。
“ 神殿を埋め尽くし、膝丈まで敷き詰められた紅薔薇の花びら。 ”
( 確かにこんな量の薔薇の花びら・・・不可能。 )
常春のエジプト全土から集められた全ての紅薔薇。その量を用意したら・・・
こちらも日本中から・・・いや、近隣の国からも集めなくては成らないだろうと、自分でも思ってしまった。なにせ、エジプト王女の我儘で・・・
ちらっと見れば・・・
隣のエジプト王女、キラキラの髪の中で目をきらきらハートに輝かせて見ている・・・。
「 歩く時は、薔薇の花びらが敷き詰められていると思って下さい。 」
それからイシス神殿の背景はですね・・・
こんな感じ。とCG責任者が言葉を被せ、監督に代わってモニターを見せた。
それは、鏡の様に輝く白い大理石で柱も祭壇も埋めつくし、王の標章であるロータス蓮の花を黄金で無数に二人が歩く両脇に浮いていて、エジプト全土から寄せ集めたありったけの紅薔薇の花びらの床。
影像の中には誰も居ないのに、そこにバーチャル透明人間を入れて歩かせたのか、フワフワと一歩一歩進む度に舞いあがり・・・
重力の無いこの星空の世界には、舞いあがると神殿の空間にずっと浮いていた。
柱の向こう側と歩いた跡が抜けていて、そこに無数の星空。
この星空は満月の明かりで、今までの漆黒の夜ではなく、蒼白く澄んでいる。
その満月の後ろの空の色・・・
さっき見た、シーザリオン。上杉飛凰君のしていたコンタクトの瞳の色。
蒼水晶の色だと気付くのに時間は要らなかった。
「 この色、シーザリオンの眼差しがクリスタルの透き通った蒼色です。
二人の愛が命と成って、二人のもとに容と成って生まれてくる。
その前の二人だけの結婚式ですよ。どうぞ、頭の中でイメージ お願いしますね。 」
目を瞑ってイメージすると・・・
厚みが膝丈になるバラの花は、歩いて花びらが舞う度、その芳香に酔うほどで・・・
透き通る空気の中に光る星空の蒼の中に、鏡の様に姿を映すほど磨かれた白い大理石
姿を柱一本一本に映し出すのは・・・
二人の進む祭壇への道の周りに浮かぶ、黄金の蓮の花を月光が当てて
その金色の光が大理石の柱に姿を映し出してくれるのだろうと、想像していた。
( それじゃぁ、手を差し出す場所は・・・)
何番目の柱からいいのかと思い描く。誰も入っていなかった画像の中に舞う花びらから、
何歩が柱と柱の間隔なのかと黄金の光を映すロータスの位置に・・・
そう頭の中で歩数を数えていた。
「 はい、じゃあ二人がイメージできたら、行きましょう。 」
はい。と二人で返事をし、セットに向って歩きながら少し練習してみた。
「 京子。手を出したら手を上に乗せて、それで握ったら握り返して・・・
だからそれまで何もしなくていいよ。付いておいで。俺に・・・」
はい。と言って ものすごく優しい微笑みになったグラマラスなデキル女性。
この出来る人は、どんなイメージだったのだろうと聞いてみた。
「 どんなイメージした? 」
うんと・・・と、話し出した京子。彼女が言うには・・・
優しい表情にさせる彼女の感情は、初めて恋に落ちた人と結ばれる事の喜びと・・・
もう一つ。
自分たちがこの先、本当に結婚する未来を思い描いていたのは、二人とも同じだったけれど
演技の中に入れなくては成らない想像が、蒼く透明な夜空の背景に思わせた事。
ローマとエジプトの統合
国を背負う二人が結ばれると云う事は、二つの国の二人ともが共同統治者になる事。
誰の許可も得ず、国民にも知らせず、ローマの軍事力をエジプトに、エジプトの自然から溢れる富である経済力をローマに、お互いの国の繁栄の為にとは・・・
公にしない密かな二人だけの心の繋がりだけの共同条約を結ぶ事。
ただの愛情からだけの結婚式ではなくて、自国の繁栄の為にお互いが必要とするものを自由に補い合える関係。
クレオパトラがローマ兵士を勝手に動かす事も、シーザーがエジプトの宝石を使う事も、
お互いが信用しているからこそ・・・
全てを委ね合える程・・・信じている・・・・
「・・・それほど、愛してるって、言ったら・・分りますか? 敦賀さん。 」
彼女は両手をお腹にあてて、生まれて来る子を思い描いていたのだろう。
星空の透明で蒼い色・・・二人の間の子供の瞳の色もきっとそうなんだろうって・・・
クレオパトラがそこまで思って大祭司女神である自分の神殿で、自分の神に誓うと云う事。
自分の心の中に永遠にシーザーを想い続ける自信があると、自ら用意させた結いの儀を
シーザーも同じ気持ちで受け止める事。
「 うん。分るよ・・・どのぐらい愛してくれているか・・・」
婚姻の儀と監督が付けなかった結いの儀と云う意味も、全てを結び合う瞬間だと思い描くと
クレオパトラの覚悟がシーザーへの愛の大きさであると、計り知れない程・・・
愛してくれている・・・それに負けない程、シーザーも心から・・・
愛しています・・・って伝えたい。
「 OK 二人の表情がいいから、撮影に入ろうか・・・」
_____ じゃぁ撮りながらCGも横で重ねていきますか? 監督。
「 そうだね、じゃそれで。 」
_____ 二人の雰囲気を壊さない様に、静かに撮影の合図を・・・
「 行きます。よーい・・・」
・・・カチッ
________ 満月の夜にしか行われない王家の儀式。
もちろんプトレマイオス王家の者以外、エジプト人でも脚を踏み入れる事を許されないその神聖な場に、ローマ人であるシーザーが入る事は、今までであったなら在り得なかった。
二人は開けられた神殿の前で、咽かえる様な薔薇の芳香に大きく息を吸い込んだ。
二人で神殿にゆっくりと歩を進めて行く。
一歩、もう一歩・・・歩を進めた所で立ち止まり、後ろにいるそれぞれの・・・
シーザーは腹心である2人の将校に
クレオパトラはお付きの家臣3人に
「 二人だけで・・・」
「 扉を閉めて。 」
それぞれがそう言うと、二人に付いていた者達は跪いて頭を下げた。
ゆっくりと歩を祭壇に向って進めだす。その度に舞いあがる薔薇の花の向こう側に鏡の様に磨かれた大理石の柱には、満月の灯りを反射する王家の象徴である黄金の蓮の花からの金色の光に照らされた二人が写る。
クレオパトラのベールのようなガウンは、長い裾に散りばめられた透明なクリスタルなど、エジプトの土地から掘り出される数多い宝石が、富が自然から溢れるこのエジプトを思わせて、
空水晶のキャストライト・クリスタルのビーズに、蒼金石と言われる この満月の明るい夜の蒼い色に金が星の様に混ざるラピスラズリのビーズ。それに・・・
月光に共鳴して自ら光りだすと言われる銀が散りばめられていて、満月の灯りの中にクレオパトラの歩いた跡が、月の光の線となってその下の星空に残していった。
二人は月明かりの透明で蒼い色の中、黄金の蓮の花が作り出す金色の光の中に輝くお互いの姿が浮かび上っているのを見詰めながら、ゆっくりと祭壇の前に歩を進めた。
キラッと大きく一瞬だけ輝いた光に、二人が瞬きをする。
その耀きはたった一度だけであるが、目を奪うほどの輝きだった。
その光は・・・
黄金に輝くシーザーの頭に乗せている月桂樹の輪が鏡の様な大理石に光った時で、
シーザーは自分のその姿を見届けると、クレオパトラに手を差し出した。
「 どうか・・・」
シーザーが手を差し出すと、クレオパトラはシーザーの瞳を見詰めて手をその上に乗せた。
二人の間を舞い浮かんでくるたくさんの紅薔薇の花びらが、二人が重ね合ったお互いの手の動きが創った微風の中に、クルクルと小さな円をそれぞれ描き二人の周りを舞い散った。
シーザーもクレオパトラもお互いが金色の光に照らされて輝き浮かび上がっている姿を見つめながら、ゆっくりとゆっくりと、・・・
この時を楽しむ様に少しずつ祭壇に進んで行った。
祭壇の前に来ると二人は目を瞑り重ねあっている手を強くお互いに握り合った。
目を瞑ったまま二人は・・・
クレオパトラは左手を胸に当て王女としての証を、シーザーは右手を胸に当て皇帝としての証をイシス神の前に示した。
そしてそれは、永遠にこの場所・・・
この心の場所にお互いの存在を残すという証でもあった。
クレオパトラは目を開けてシーザーの手を自ら離し祭壇の向こう側に入ってゆく。
それはイシス神殿の大祭司女神である彼女だけが踏み入れられる場所。
シーザーはそれを目で追っていると、クレオパトラは祭壇を挟んで向かい合った。
クレオパトラが祭壇に手を翳すと、その祭壇に映る・・・
ギザのピラミッド。
紀元前2000年には完成していたその、二人にとっても遺跡である王の象徴。
そして、クレオパトラが手を広げ、前を向いて目を閉じると
テーベの東、ルクソールの神殿や王家の谷が現われる。
「 このエジプトのファラオ達の前で、エジプトの歴史の中に・・・
自分とローマ帝国がこれから共に創れる事を喜びと感じます。 」
シーザーは何も言葉を発する事無く右手をもう一度胸に当てた。
クレオパトラはイシス女神の言葉から、王女として神の御許に祈りを捧げる言葉に変える。
「 では、一緒に神に・・・その純粋な心を捧げてください。 」
クレオパトラは大祭司の側から、王としての祈りを捧げるシーザーの横に回ってくる。
その祭壇の前に二人は、ゆっくりと両膝をついた。
祭壇にクレオパトラが手を出すとシーザーはその手の上に手を重ねた。
「 失礼ながらインペラトール・・・」
静かにクレオパトラが話し出す、その言葉はシーザーの心を確認する様であった。
「 私は貴方を・・・」
思い出しているのだろうか・・・悲しい別れの最後を看取った。
その声は震えながら言葉に詰まっている様に感じて、シーザーは重ねていた手に力を込めて握った。クレオパトラに向けたその時の表情は、とても慈愛に満ちていて戦に出向くような怖さは無く、ただ・・・一人の女性を愛する優しい微笑みであった。
「 事実、私がテーベに出向いた時・・・亡き父王の御魂が幾度も・・・
『 北より、そなたの瞳の色の海を渡り、助けに参る。』とのお告げを下さり、
私の占星術師メリエトも、星の輝きに同じ事を予言しておりました。
それは・・・私がこの地に帰ると、貴方が・・・居て・・・」
言葉に詰まったクレオパトラがシーザーのその手にもう一重、反対の手を重ねると、
シーザーも重なり合った手の上に手を重ねて3つの手を、その大きな手で包み込んだ。
「 もう何も心配する事は無い・・・
予はエジプトとの和平の為に、心から成る敬愛を女王の英知に捧げ、
一身を賭けていかなる努力をも惜しまない事を、エジプト王と・・・
そなた、プトレマイオス王女に誓い申し上げよう。 」
お互い同時に目を閉じながら頭を下げ、祈りの中に誓いを込めた。___________
_____ カッ・・・
ADがカットを掛け様としたけれど、しーっと監督は手でアシスタントを止めていた。
「 もう少し見てみましょう。何かしてくれるのかもしれない。 」
シーンは其処までだったけれど、突然入れたくなったシーザー心。
アドリブに京子が返してくれるのか分らないけれど、出来るような気がしてならなかった。
________ シーザーは重ねあった手を自分の胸に引き寄せた。
「 この心の中に、そなたが居る事が真実であると、この神とファラオ達に誓えます。 」
クレオパトラはシーザーの瞳を見詰めると、ゆっくりと瞬きをした。
その瞬きにシーザーは、自分がしてきた様に心を囚われてしまったのだろう。
言葉の無いクレオパトラは、もう一度瞬きと共に、優しい笑みを浮かべた。
「 だから、この満月の空の彼方にある我が国にも、誓ってもらえますか? 」
その言葉にクレオパトラはとびきりの笑顔を首を傾けて、シーザーに向けた。
「 ローマの婚姻の儀は・・・」
シーザーは繋いでいた手を引っ張って唇を重ね、クレオパトラを胸に抱き寄せた。
クレオパトラは跪いていた体制が崩れてその身をシーザーの胸の中に力を抜いて委ねた。
「 予と共に・・・いや・・・
このまま自分の心の中に、永遠に居て下さい。
自分の中で、この想いが決して無くならないと誓います。 」
胸の中で寄り添うクレオパトラを抱いていると、顔を上げて目を見詰められる。
「 ・・・はい。
私の心にも・・・
貴方が永遠に居る事を誓います。 」
二人は瞼を一緒にゆっくり閉じながら、もう一度唇を重ね合った。
二人は動く事無く長い間、時間を掛けてゆっくりとお互いの心を確かめ合う様に・・・
そのまま唇を重ねていた。___________
_____ 「 カット。 」
「 うーん、今のいいよね。 」
監督が横のCG責任者と話していたのが聞こえて、京子。よく出来たね。と胸に抱き寄せたままウインクした。
ありがとうございました。と言うキョーコの背を腕で抱きながら、持ち上げて一緒に立ち上がった。その時、耳元で誰にも聞かれない様に・・・
「 ねぇ、本当だよ。 」
と囁くと、キョーコもそのまま耳の傍で言ってくれる。
「 久遠、私も・・・」
その言葉に、もぉぉ~・・・このまま本当にぎゅぅ~って抱きしめて、ちゅ~ってしたまま抱っこして、ひゅ~ってお家だったらベッドに浚って行って、ごろっと二人だけの甘い時間を過ごせるのに・・・
でもここはスタジオだし、耳元から顔を離して見詰めると・・・
切れ長の英知溢れるデキル女。クレオパトラだったので、ふっと息を吐いた。
えっ?何、ダメ息?と・・・ビクッとした できちゃった彼女を横に感じて、違います・・・。と言いながら抱きしめちゃイカン。と腕を前で組んで監督のところに、二人で並んで向った。
「 敦賀君も京子さんも、今の良かったよ。なんかね~・・・
エジプト式は国同士の和平って感じのままで、イタリア式が二人の愛って感じだった。 」
だから、このまま使いたいんだけど・ぉ・・な・・ぁ・・・と、
また考え出した監督は語尾がどんどん小さくなったまま、言葉が消えていった。
と、思ったら・・・
「 よし、影像を足そう。 」
そう言いながら、ポンと手の平を叩いたので、何か思いついたのだろうと思って待っていた。
そうだな・・・神が起こした風か・・・
それとも家臣がドアを開けるか・・・
はたまた、亡き父王プトレマイオス12世の御魂・・・
・・・ブツクサ言い出して監督が考えたのは、無数の薔薇の花びらを全て舞い散らせ
手前が満天の星空にして、薔薇の花びらの中に二人の姿を隠すというものだった。
観客側の手前から星空が奥に広がって行く様に、薔薇の花びらを手前から奥に向って
さ~っと全て飛び散らせ、シーザーとクレオパトラに押し寄せる様に・・・
その薔薇の花びらの中には、黄金の光の中に金色に光る花びらと、紅薔薇のそのままの花びらと、もう一種類・・・
満月の明るい光の中に、月光に共鳴する銀の光を混ぜて・・・
王としての金色と、二人の本当の愛の紅薔薇と、神と崇められるお互い。
クレオパトラはイシス女神の守護神で、シーザーは戦いの神と崇められる存在。
月光の共鳴は・・・
この攻めと護りの両方の神としての関係を、銀の共鳴が起こす光としてで・・・
その光に照らされた二つの、金と銀の光を浴びた花びらの中に
二人の心からのもどかしい愛が、成就したとの象徴を紅薔薇に包み込むと説明してくれた。
「 はい。まぁいいや。影像を創らないといけないしね。 」
じゃぁその気持ちのまま、お互いどうぞ・・・と、促された衣装変え。
どうぞこちらへ。とそれぞれの衣装さんが手に持っているのは、お互い薄物の夜着。
_____ ねぇ、京子ちゃん。太った?
プロの衣装さんはキョーコのサイズが変わっている事に直ぐに気が付いていたらしく、
声を掛けて楽屋ででも伝えようかと思っていた。
キョーコは俺の目を見詰めたら、ぐいっと背中を押して・・・
「 敦賀さん、早く衣装変えしてきて下さい。 」
遠ざける様にしたので、はいはい。女性どうして話して下さいと・・・
実は監督が付けてくれた、京子の衣装係。
彼女の衣装係は、少しずつお腹が目立ってきた妊婦さんだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
To be my Grace No.13に続く