カメラと彼女と自転車と 4 (なんてことない非日常・ユンまんまさん)
たくさんの人が別れを惜しんだり、一人決意をしながら 荷物を抱えなおしたり、家族で楽しそうに今後の予定を立てたり・・・。
2014.7.31
―アナタの魅力を引き出す、KOOSAシリーズ―
そう記された表題でまとめられた書類の束を、それぞれ受け取ったキョーコと蓮は目の前にいる黒崎 潮監督とを交互で眺めた。
2014.7.29
冬
【おめでとう】
【ありがとうございます……】
少しばかり距離を置いている二人だが、定期的にデートもしているし電話もメールも欠かさない。そんな二人だが今日は特別なデートを楽しんでいた。マホの就職が決まったということで、少し背伸びをしたレストランに来ていた。少しばかり気合の入った服で、向かい合うナツキとマホ。
マホも珍しくワインを頼んで乾杯した。
2014.7.28
撮りがいのある二人だった。
今を時めく敦賀蓮と、最近評判が鰻登りの京子。
俳優があらかじめ決められている仕事はあまり受けないのだが……。
蓮にも興味があったし、京子がどれだけ成長したのか見てみたいという気持ちも大きかった。
2014.7.23
2014.7.13
まるでアロマオイルを炊いたかのように、スタジオ内は香水の臭いが充満していた。
この手の撮影ではよくある事だ。
最近では店舗の中でもこんな風に香水をぶちまけておいて、そいつがどこの店に入ったのか一発でわかるようにしているブランドもあるくらいだからな。
だが、俺はこの手法を好きになれない。
香水は人の体温や体臭と混ざり合って、その人の醸し出す空気と同調して。そこで初めて本領を発揮できると思っている。
こんなルームフレグランスみたいな安っぽい使われ方、人間の為に作られた香水が可哀想だ。
だから撮影を始める前に空気の入れ替えをさせて、俺はパブリックスペースへ逃げていた。
しかし逃げていたお蔭で、撮影前からとても面白いモノを発見できたと思う。
女性誌で「抱かれたい男性」に例年選ばれる人気俳優の、一方通行な初々しい恋心。
その男に想いを寄せられるも恋愛方面の感覚が壊死しているのか、鈍感を通り越した女の見事なフルスイング。
しかし演技に紛れ込ませた男への思慕は、カメラのレンズを通して俺に強く訴えかけてくる。
“叶う事はないけれど、でもそれでもいいの。傍にいられる今が倖せ。”
―――本当に、それでいいのか?
俺はこの娘がどんな風に成長していくのかを、もっともっと見ていきたいんだ。
身体的な成長も、演技力も、恋も。
その総てが女優「京子」を作る糧だ、勝手に天井など決めてかからないで欲しい。
それに、今はバラバラな方向を向いているこの二人の想いが重なる時、そこに一体どんな作品が生まれるのか見てみたい。
二人への野次馬的な好奇心と、クリエイターとしての純粋な欲求。
ふたつの大きな欲がこの胸を予想以上に熱くさせ、拡声器を取る手も震えさせた。
「よし、始めるぞ!!」
2014.7.12
ある時は突発的なアクシデントで。また、ある時は小さな子供のように泣きじゃくる私をあやす為に。
何度も抱き寄せられた事のあるその逞しい腕の中はいつも優しい、いい香りがした。
そのうち数度は、役作りの為の苦くて渋い煙草の臭いも一緒だったけれど。
私の心も体も癒して甘やかす、一種のセラピーだと思える程柔らかな香り。
だけどすぅっと胸に深く吸い込むと、すっきりとした爽やかさも感じられる。
他の男の人の香りなんてわからないけれど。
あの人の傍が危険な事だけはわかる。
私の思考を奪って、ぐずぐずに溶かしきって、気付いた時にはもう手遅れ。
その香りを嗅いだだけで、身体も心も私のすべてが彼と言う存在に捉えられてしまう。
そんな、危険な香りを身に纏っている男性(ヒト)なの―――
2014.7. 8