To be my Grace No.7 (mimi's world・美海さん)
※文章に以下の描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
・妊娠(カイセツ後)
・流血表現(撮影シーン)
・微桃(撮影シーン)
コン、コン・・・
_____ はいどうぞ・・・
中から監督の声を聞いて、二人で顔を見合わせた。
いい?と微笑んで、彼女が頷いたのを確認してからドアを開けた。
「 おはようございます。 」
二人で挨拶をしてから、いつもは言える・・・言葉に詰まってしまった。
「 おはよう。敦賀君、京子さん。 今日も宜しくね。 」
監督に言われて、はい。とも、宜しくお願いしますとも・・・言えなかった。
どうしました?と聞かれ、あの・・・と、話し出したキョーコの頭をポンポンと撫でてから、自分だけ監督の前に歩いて行き、頭を下げた。
「 申し訳ありません。京子は・・・引退を考えています。 」
なので・・・と話し出した自分の言葉を遮る様に、どうして、突然?と言葉が返ってきたので頭を上げ、実は・・・と言いながらキョーコに振り返った。
「 敦賀君、京子さん。・・・もしかして、お二人。お付き合いしてますか? 」
二人揃って、素直に、ハイと頷いた。
「 やっぱりそうですよね。カインとセツカさんを見ていて、
なんとなくそうかな?と思いましたよ。それで、京子さんは・・・
・・・いえ、お二人に・・・赤ちゃんでも出来たんでしょうか? 」
「 無責任な事をしたと思っています。 」
「・・・。やっぱりそうですか・・・。」
近衛監督は背を向けて、タブレット画面を見詰めていた。何枚か画面をスライドしながら口を開いた。
「 敦賀君。京子さん。あなた方・・・台本、読みましたよね?」
秘密厳守の丸秘である台本を読んでしまったのだから、どう処置しようか考えていると思っていた。
はい。とキョーコが言った後そのまま続けて言った。
「 お返しするだけでは・・・それに私は口外しませんとお約・・束・・・」
「 じゃぁ、いいじゃないですか。 」
キョーコの言葉を遮る様に監督が被せて言った時、監督はこちらに振り返って微笑んだ。
「 だって、台本読まれたのでしょう? だったら続けて問題ありませんよ。 」
京子さん、これ・・・
そう言って差し出したタブレット画面は、この映画のCG画像案だった。
「 敦賀君、京子さん。この映画・・・PTOLEMY CONSOLE
プトレミー・コンソール もう、どんな映画なのか分ってますよね。 」
はい、現本も読んでいます。と二人で言い出した事・・・
プトレマイオス朝末期の物語。この映画は、戦いの神と呼ばれたローマ皇帝、ジュリアス・シーザーとアレキサンドリア・エジプト最後のプトレマイオス朝・・・クレオパトラ7世の恋物語。
近親結婚を続けてその血を濃く守ってきたプトレマイオス朝。
それを嫌うクレオパトラが初めて恋に落ちた人・・・ローマ皇帝のシーザー。
この二人が国の境無く、恋に落ちて・・・
アレキサンドリア滞在中のシーザーとクレオパトラ間に、シーザリオンと云う息子が出来て
シーザーにとって初めての世継ぎになる。
近衛監督が見せてくれた映像は・・・
アレキサンドリアの海の神殿や、エジプトのギザへ新婚旅行に向かうナイルの光景や、
クレオパトラが追っ手から逃げるサハラ砂漠のその影像
ロケではなく・・・
全てCG 近未来の建物の様に、遺跡建造物を抽象的に変えて・・・
床の無い・・・
全てが、降る様な満天の星月夜の空に浮いている画像だった。
「 Console 癒し・・・プトレマイオスを癒すという意味で付けました。
七夕の織姫と彦星の様に、永遠の愛がその場に残る伝説のようなイメージです。
ナイルは天の河のイメージですね。
永遠に二人の愛がその場に、起源前330年からのプトレマイオス朝1世から12世の後、三女クレオパトラ7世だけが、アレキサンドリアを守ろうとした・・・ローマの力を借りて。
この僕の設定、2330年その未来になっても・・・この土地に溢れる富には、二人の愛が残っていると表したいのですよ。いいですか・・・」
近衛監督がぺらっとスライドした映像は、クレオパトラ7世
シーザーの子を宿した時の姿。
「 そう、お腹だけね。こうやって・・・」
人差し指で、クレオパトラのお腹を伸ばしたり へこませたりさせながら・・・
京子さんを撮影後に段々と処理して行く筈の・・・妊娠された姿です。と言い、その画面を消して衣装デザインを見せてくれた。
「 そうだから・・・もう、このCG案は必要ありません。その代わり・・・
京子さんの衣装デザインを、変えなくてはいけませんね。 」
じゃぁ、それで・・・いいですね? それでは、京子さんのお腹が大きく成る前に、撮影したいシーンを先に、シーザリオンが誕生した後なども、撮りましょう。
それと、CMも、放送は1年後の映画公開前ですけれどね・・・今、撮って置きましょうか。
ならば・・・ブルータス役の貴島秀人さんと、シーザリオン役の上杉飛凰君にも・・・
スケジュールの確認を、先に撮りますと言わなくては成らないのでね・・・
それで・・・お腹が大きくなるのは・・・徐々に・・・ゆっくり、京子さんに合わせて撮ればいいですか?
ふふっ・・・・
今度は、敦賀君が・・・京子さんをサポートする側なんですね。
カインヒールの時に、セツカさんがいつも一緒にサポートして・・・
それで敦賀君。何かが吹っ切れましたよね?
違います? その頃からですか?お二人は・・・・
まぁまぁ、お二人の馴初めなんか聞いても、下世話なおじさんみたいで申し訳ない。
で、スケジュールは、早めますよと・・・
微笑みながら早口でスケジュール変更を言ってくれている監督が、パンと俺の腕を叩いて敦賀君も京子さんもおめでとう。そう言われて画面を傍で見ていたキョーコの手を握った。
「 で、ご結婚は・・・・」
言いかけた監督の言葉を遮った。
「 結婚は、まだ・・・できませんので・・・」
そう言葉を遮りながら、キョーコの手を指を絡めて握り直した時、監督が言葉をさらに被せる様に言って来た。
「 いえ・・・お二人がご結婚発表をされるのであれば、こちらには条件があります。 」
その条件は・・・
結婚するのであれば映画公開まで、発表しないと云うものだった。
キョーコの妊娠はスタッフやキャストには ばれてしまうので、お腹が目立ち始めたら、口外しないと言う条件でそれとなく時期をみて、伝えたいと云う事だった。
「 それで、いいですね。 」
そう監督に言われて、サッ、がんばりましょう。いいですね。と温かい言葉を受けた。
「 あぁ、付けたし。京子さん・・・」
はい?っと俯いていたキョーコが顔を上げたら、監督は厳しい顔で言った。
「 京子さんのこの映画での演技に期待しています。
期待に答えてくれる演技、頼みますよ。
それで・・・
もし自分が気に居る演技が出来るようなら、
出産後も貴方を僕は、リクエストしますから。 」
だから、辞める必要ないです。さっ、がんばってください。と、優しい笑みに成った。
_________ それで・・・今日はそのCM撮影の日だった。
「 ごめんね・・・プロポーズの方が、後に成って・・・ 」
社長の承諾を得てからでないと、ダメだった~。とは・・・はっきり言って言い辛い。
社長に言いに行く気に成ったのも、監督が京子をそのまま使うと言ってくれた事が、自分の背中を押してくれた。
それに監督が出してきた条件も、社長に伝えて・・・
すっきりしたまま、さて! それじゃぁ・・・これから・・・
パキッ、パキッと両手を鳴らし、エレベーターのボタンを押して、ウキウキドキドキもしながら、キョーコにどうやってプロポーズしようかと、考えながら降りてきたところだった。
( もぉ~・・・どうして社さん言っちゃったんだ~ぁ~~)
そんな風に、駄々をこねてバタバタしたかったけれど・・・
まぁいい。これから、きちんとプロポーズはしようと気を取り直し
重量級の愛の家庭で育った俺が、結婚は条件通り・・・出産後に成ってしまうけれど・・・
婚約だったら、それまでには出来るとも思う。
それにもう・・・
_____ そうだね・・・
・・・って、俺と結婚する事への返事は貰ったから ____________
キョーコの左手に自分の左手を重ねてぎゅっと握ると・・・
「 ありがとう 」
・・・って返ってきて、もうそれだけで・・・幸せだった。
なんで今日、絶対社長に言うぞ!と意気込んだのにも、訳が合った。
きっと、久々に会う・・・貴島がうるさいだろうから。
近衛監督が見せてくれたキョーコのクレオパトラのイメージ・・・
Dark Moon の打ち上げパーティの写真。
それに・・・新開監督が記念に撮ってくれた、Rindouの蝶子。
この二つ。黒髪で・・・こんな風な~・・・と、監督がイメージ画像を出してきたメイク後の京子は、合成大好きな監督が創った、その正に二つのイメージをくっつけた・・・
オリエンタルな女神様
それで輝く王妃様、そのものだったから。
貴島が変えた様な京子に、毎回会わせるのは、嫌だった。
その前にきちんと、俺の彼女。いや、婚約者。と言える様にしておきたかった。
そして、普段着はコレ。
・・・全くの色気なしの服装。
それに、まだまだ、全くへこんだままのお腹なのは分っていたけれど・・・
締め付けないで欲しいと思ったのと、薄着で風邪を引かないで欲しいのと
そんな事をいろいろ考えたら・・・
ラブミー・ツナギって、妊婦服にぴったり!
って思いついた。それに、事務所に居る分には、ヘタな違うツナギやら、ずどっとした服を着させたら・・・
あれ?最上さん? ピンクじゃないの?と、逆に聞かれるんじゃないかと思っていた。
家に居る分には自分の服でもいいけれど、外に出かけたら明らさまにバレバレだよなと・・・。
「 ん~、キョーコ他に無いの? 」
・・・と、キョーコの部屋で聞いても、あるわけ無い、思いっきり妊婦服前の妊婦が着る服。
買いに行く様な暇も無い。
「 ジャージとかは? 」
そう聞くと、あるのは・・LME養成所マーク入りのジャージだった。
とりあえず着れそうなのは、両方ともプロダクションの名前入り。
まぁ、京子を辞めなくてもいいし、LME所属だからいいだろうと、意外に業界に居て誤魔化せるのはそんなものの方がいいんじゃないかと思った。
「 んじゃ、色気無いけど・・・ジャージとツナギに決定ね。 」
ええ~~~・・・って項垂れたけど、う~ん仕方ない。とも言っている。
キャストやスタッフにそれとなく伝えるまでだよ。と納得させた。
「 それで、社長さんの条件って・・・?」
キョーコが気にしていたその条件は、俺が一番考え悩んだ事だった。
クーと話して居た時・・・
保津周平について聞いていた。
俺がジュリのお腹に居たから、彼女の為に保津周平を辞めた事。
社長には、俺も・・・
敦賀蓮を辞めて久遠ヒズリとして発表した方がいいのかと云う事だった。
_____ いんやぁ・・・いいんじゃね? そのまま黙ってろよ。
ニッと笑った社長は、世間にはそのまま敦賀蓮として活躍すると、条件を出された事だった。
「 うん、このまま、敦賀蓮のままでいろってさ。 」
それでいい? 家では、久遠って呼んでくれていいし・・・俺もコンタクトしないで過ごしたいからね。
そっ、別に視力が悪いわけじゃない俺だった・・・。
それは絶対、社さんにも言わないようにと念を押していたけれど
「 う~~~ん・・・わかったぁ~~」
・・・ったぁ~~っで、大きなあくびをしながら両腕を上に伸び上げていた。
ネムネムモードに入る彼女を見ると、このお腹には・・・
本当に俺の子が居るんだな・・・と実感することが増えて来ていた。
___________ ブーン・ブーン・・・
ポケットの中で携帯が震え取り出してみたら、社さん。
なんとも、ピッタリ10分だった。
はい、もしもしと話し出したら、セバスチャンが送ってくれると云う事で、キョーコにセバスチャンが送ってくれるって。と伝えると、ブンブンっと頭を横に振っている。
「 大丈夫じゃ・・・ない? 多分・・・」
また、多分~なのぉ~・・・っとキョーコは言っている。
それには、まぁな、とも思うけれど、きっと今のキョーコには・・・
「 大丈夫、死ぬ時は一緒だし。 」
そっ、落ちたら一緒だからね~、今度は~。とは、一緒に死んでもいいよ との自分の本心からの言葉。それに・・・
「 地上より、空の方が気分が悪く成らないと思うよ。 」
と、これから撮影映画のCMが、ブルーバックだけれど、イメージさせたい・・・
天に浮かぶイメージ
その演技の為にはいいかと、思っていた。
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To be my Grace No.8に続く