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To be my Grace No.9 (mimi's world・美海さん)


※文章に以下の描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。

 ・妊娠(カイセツ後)
 ・流血表現(撮影シーン)
 ・微桃(撮影シーン)







ブルーバックのセットの中。


何も無いこの空間に、一つだけ同じブルーの坂が組まれていた。

足を乗せると少し軋み揺れる、乗ると少しだけ弓形にへこむ坂。



______ じゃぁ、敦賀君。宜しく・・・ 


「 はい。お願いします。 」

足元を確かめて・・・ここ、目に見えるものは何も無いセットの中・・・

この背景は、海の入り江。船から下船すると云う、自分の頭の中にそのイメージを思い浮かべた。

3mばかりのブルーの台の上で、その先に広がるのは・・・


初めて訪れる綺麗な海に浮かぶ半島・・・

今見た映像・・・
満天の星空の中に黄金に髪を輝かせた、若くして女王としての責任を背負わされた

美しい女性の強く逞しくも、思いやり溢れた笑顔を乗せた

あの星空に輝いた、蒼碧の瞳と同じ色の海


目を瞑り情景をイメージし、深く鼻で胸の奥まで静かに息を吸うと

潮の香りがしてくる様に感じたら、目を開けた。




______ シーン入ります。よーい・・・


カチッ。






________ スゥ・・・


台の上に一緒にいる、自分の兵の一人の肩を押しのけて前に一歩出た。



________ ギシッ


足を踏み出した板の上は少しだけ揺れて、もう一歩、もう一歩とゆっくり降りて行った・・・


ギシッ・・

・・・ギシッ・・・ ____________




シーザーがエジプトに入ると、船に緋色のマントを掲げ戦闘の意を露にして・・・

船の舳先にいた一人の自軍の兵の肩を柔らかく押しやり、一番に歩を確かめる様に降りて行った。

自分がこれから戦闘を仕掛ける溢れる富を持つ国が、他国の軍に先に占領競れていると確認できたのは、この船の先・・・

そこに・・・自分を見詰めたまま目線を外さず、忌々しい顔で俺を見る奴が居たから。


その船着場にいたポンペイウス軍の兵の一人を、無言の中に視線で捕らえた。



「 フー・・・」


溜息を浴びせながら目を細め、顎を上げながら首をゆっくり傾げた。


・・・一つの瞬きは自分の中の合図。

相手の瞬きに合わせて無言で髪を鷲掴みし、ニヤッと口角を上げて冷笑を向けた時、



________ シャリン・・・


無言でいたシーザーの腰から小さな金属音と共に抜いた短剣。


( もう、遅い。 )

自分の侵略に邪魔な他国の兵が、その音に気付くのは遅く・・・


あ・・っ・


その声を上げる瞬間。

あっと言い切らない内に、その口の中に短剣を突き刺した。
喉をブスリと差す短剣から伝わる手の感覚に、そのまま短剣を捻じ込んだ。

首の後ろから血が噴出して

ギリギリと音を立てる様に短剣を回すと、喉の向こうに切っ先が抜ける感覚。


ただただ無言でこの男の目を見詰め続けたまま、短剣を抜くのではなく・・・

掴んでいた髪で投げ捨て突き飛ばし、その場に居た他の者達に見せしめた。



「 我がローマ軍がこの地を制す・・・」


短剣を振り下ろし、刃先にまだ滴る附いた血を突き飛ばした兵に向けた。


「 ・・・その様に、予告へ・・・」


短剣を指で一回転させ鞘に収めると・・・
回転させた刃先からは、残っていた一滴の血が自分の方に飛んできたのをさっと避け、

予告に走らせた自分の兵の頬に、その一滴の血は飛んだ。


静かな口調で話す言葉と同じ時して、突き飛ばした兵に向けた、短剣に附いた血を振り払う行為は・・・


いかなる時にも冷静に判断を下すシーザーが、最高司令官でありローマ皇帝として長く君臨できる所以であり・・・

また、ローマでは・・・

憧れを抱く女性が後を絶たない程の、端正な美貌と逞しい身体付き。


それに・・・


その視線に見詰められて、瞬き一つで倒れる者・・・


見詰められて、彼が瞬きをした時、

そこに女が居れば、その心を捉え


見詰められて、瞬きをしてしまったら、

自分の集中力が殺がれた証拠と

そこに男が居たら、その命を捉えられる。




走り去るシーザーの使いの兵は、彼の避けた一滴の血を頬に受けたまま。

その血を拭おうものならば、シーザーに歯向ったものと見做される __________





_____ 「 カット。 」


モニターの向こう側から監督がちょっと顔を出して、笑顔で親指を立てている。


冷たい表情でいた自分の頬も緩んで、笑顔になった。

一緒に演技していた自分が突き飛ばした演者さんに手を差し伸べて・・・


「 すみません。大丈夫でした? 」


自分が掴んでボサボサにしてしまった髪を見て、頭。痛かったでしょう。と付け足した。



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To be my Grace No.10に続く