Sweet ♡ Beer (a guardian angel・みーさん / SNOW VANILLA・ゆりぽぽさん)
「久々の共演がビールのCMだなんて…キョーコちゃんも大人になったよなぁ」
準備が整えられていくスタジオの片隅で、一人感慨に浸っていると、さっきの独り言に背後から返事が返ってきた。
「…ですね、最近の彼女は、演技にも艶が出てきましたしね」
振り返ると、そこには柔らかい目をした緒方監督がいた。
その視線の先には、スタッフから説明を受けているキョーコちゃんと、笑顔の蓮がいる。
( …破顔…)
蕩けんばかりの笑顔になってる…自覚なんて、きっとないだろう担当俳優に、内心ヒヤヒヤしながらも、それもまぁ、今回の役どころなら仕方ない…否、問題ないかなと、流している俺。
終始ご機嫌の蓮を相手に、困ったようにはにかむキョーコちゃんは…今や蓮と並ぶLMEの看板女優に成長した。
役 によってまったくの別人に変身する『京子』 …共演者は皆、素の彼女とのギャップに驚かされ、また、彼女の持つ多才さに舌を巻く。料理に裁縫、お花にお 茶…かじった程度だと謙遜しながらも、その実力はそれを本業とする職人からも一目置かれる…跡継ぎ(嫁)にと切望されるほどの腕前だっていうんだから、本 当…すごい娘だよな。
実際、今回の起用だって、キョーコちゃんの料理の腕前を知ってのオファーだったらしいし…。
そんな彼女に、女性としての『艶』をプラスしたのは、、紛れもない蓮本人であることを俺は知っている。
自分で自分の首を絞める結果になってしまった…蓮としては、複雑なんだろうけど、、、
オフの度に、毎度あてられる独身男の身にもなって欲しいよ、、、なんて、つい愚痴りたくもなる。
どうやら、二人の関係は監督にもバレてるみたいだし…。
まぁ、蓮本人に隠す気がないんだから、仕方ないんだけど…っていうか、本当、それじゃ困るんだけどさ。
キョーコちゃん、綺麗になったもんなぁ…と、監督の言葉に相槌を打つように頷くと…
「どうやら、軍配は不破君じゃなく、敦賀君のほうに上がったようですね、…この分なら良い画が撮れそうだ」
(…なっ?! 監督っっ…どこまで知って…)
その言葉に思わずギョッとしたが、そんな俺に気づくこともなく、監督は目をキラキラと輝かせて二人に近づいていくと、撮影開始の合図を告げた。
******* Sweet ♡ Beer 〔CM〕
夕闇に包まれたマンションの一室…広めのベランダには友人達が花火を見るために集まっている。
ヒュ~~~~…ドドドーン… 空を彩る花火に歓声が上がる。
ベランダのテーブルに並べられたビール瓶…そのうちの1本を手に、室内へと向かう人影…
キッチンには、美味しそうに盛り付けられたお皿を見て、笑顔を浮かべる京子がいる。
そんな京子の背後から、抱きしめるように長い腕が伸びてきて…
京子が振り返るのと同時に、パクリと口に運ばれた料理。
「…ん、美味しい」
指をぺロリと舐めあげる蓮を見上げて、京子は上目遣いに可愛く睨んだ。
「…もぉ、つまみ食いしちゃダメッ!みんな待ってるんだから」
彼女を見下ろして…にっこりと微笑む蓮は、
「…俺は二人きりでも…(独り占めできるから) よかったんだけど、ね」
そう言いながら、グラスにビールを注いでいく蓮。(深みのあるピンク色をしたフルーツビール)
一つを彼女に持たせると、カチンとグラスを鳴らしてそのまま一気に飲み干す。
その姿を見て、もぉ…っと、照れながら同じようにビールを口に運んだ京子が驚く。
「…甘いっ」
頬をほんのり染めた京子が嬉しそうに微笑み、みつめあう二人。
花火の上がる夜空をバックに商品の映像がアップで写され…
『 Sweet ♡ Beer 甘酸っぱい果実のBEER (全6種類) 』 今なら、京子のオリジナル(酒の肴)レシピ 付いてます!
花火に照らされて重なる二人の姿が再びクローズアップされ、近づく二人の足元の映像に、蓮の声が別撮りで流される。
「 いろんな恋の味…(一緒に) 体験してみる?」
*******
7月から流れ始めたそのCMの反響は大きく、雑誌でも女子会などの特集で話題の商品として注目され、売り上げを伸ばしている。
『 Sweet ♡ Beer 』 種類も豊富で可愛らしいラベルのついたそのビールを、彼女も気に入ったようだ。
「ん~~、本当に美味しい~~っ 甘くて飲みやすいから、飲み過ぎちゃいそう…」
ほんのりと染まった頬、とろんとした瞳…
( 可愛い過ぎるだろっ/// )
けど、あのCM…全国に流れてるんだよな…それを思うと、仕事とはいえ、正直、複雑な気分になる。
「……」
「…あ、敦賀さんには甘過ぎ…ました…よね?すぐに別の用意しますね」
反応のない俺に彼女が気づいた。
何かを察知したからなのか…慌てて立ち上がろうとする彼女の手を掴んで、グイッと抱き寄せた。
膝の上に彼女を乗せて…にっこりと微笑んで、耳元で囁く。
「…甘いのも好きだよ?」
君と一緒なら何でもいいんだ…例え、どんなにマウイ食べ物でもね。
一緒にこうしてお酒を飲んで…誰も知らない彼女を、俺だけが知ってる。
俺は今、すごく、しあわせなんだ …でも、だからこそ…怖くもなる。 誰かに君を奪われるんじゃないかって…
本当は誰にも見せたくない…君のすべてを全部俺だけのものにしたい。
…そんな自分勝手な欲望が、俺の中で渦巻いてる。
でも、そんな格好悪い姿は見せたくないから、先に君を酔わせて…しまおうか。
「飲み比べ…しようか?」
「…え?」
「明日はオフだし、全種類…キョーコなら試してみたいんじゃないかと思って…ね?」
その言葉に、好奇心旺盛な彼女は目を輝かせてウズウズしてる。
あの日、1種類しか飲めなかったことをすごく残念がってた彼女。
その話を聞いたスポンサーから、事務所宛に大量のビールが届いたのは言うまでもない。
キッチンへと向かった彼女が、背を向けたまま小さな声で呟く声が聞こえた。
「…もぉ…っ…どんなお酒より、酔わせるのが上手いんだもん…困っちゃう///」
「っ…///」
それは君の方だろって、、、俺は思わず聞こえない振りをして顔を手で覆った。
『 Sweet ♡ Beer 』 大人になった君と飲む…そのビールは甘いだけじゃない。
やみつきになるソレは…恋の味…だからかもしれない。
~FIN~
コメント
こんばんわ
うわぁ
甘い
そう思います好きです
ビールの泡がはじける甘いシーンにうっとりです
Posted by perorin at 2014年7月26日 01:34
私まで・・・
美味しく 甘く まろやかで 弾けたお味を・・・
堪能してしまいましたぁぁ〜(^∇^)/
ごちそうさまでした。みーさん!
Posted by 美海* Mimi at 2014年7月26日 01:35
すみません!データに不具合があったためページ作り直しました。
それに伴いまして、頂いたコメントもこちらに移動しております。 (コメントの日付はperorinさん7/5、美海* Mimiさん7/20)
Posted by さに at 2014年7月26日 01:39
レスが大変遅くなってすみませ~~んっっ orz
perorin さん
タイトル通り 甘甘です… えへ。
楽しんでいただけたようで嬉しいです。
美海さん
甘くまろやかな… 泉のような味
おかわりは口移しで…///
そんな二人のあま~い夜はこれから…
地下室はないから ここまで、、、てへ。
ゆりぽぽさんに描いて頂いた挿絵が、もぉ~~素敵過ぎて感涙。
企画を楽しませて頂きました。
sunnyさんに感謝を込めて ありがと~~っっ!
創作に追われて、全部の作品が読めてなかったので、、、
これからじっくり堪能させて頂きま~~す。
Posted by みー at 2014年7月31日 08:13