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Operetta 7 (Tempo2.0・sunny)

――しかし、食べづらい……

目の前の男はニコニコとずっとこちらを見ている。
おかげでどうにも居心地の悪さを感じるというか、とにかく居た堪れない。

「あの……」
「ん?何?」
「そんなに見られると食べづらいというか……」

そう言うと、蓮は「ああ、ごめん。ついね」と微笑む。

「『つい』って……私の顔を見ても、そんなに楽しいものでは無いかと思うのですが?」
「う~ん、楽しいとは違うかな?」
「と、申しますと?」

「俺はね、目の前に最上さんがいるという事が幸せなんだよ」

そこであまりにもトロントロンに蕩けそうな甘い表情を浮かべるものだから、キョーコはどうにも困ってしまう。
そうやってあっさりと自分の心を持っていってしまうこの男は、まったくもって心臓に悪い。
恥ずかしくなり視線を下げたキョーコは、思わず近くにあるグラス辺りを見る。

「敦賀さん、そんな事より食事を……」
「もう、食べたよ?」
「うっ……そうですね」

確かに蓮の前の皿はすでに空となっていた。
キョーコの方はというと、蓮に見られていることが気になってそれどころではなくて……。

「いいよ。君はゆっくり食べて?」
「でも、また見るのでしょ?」

困ったようにチラリと上目遣いで伺うと、蓮はそれを目を細めて見る。

「そうやって、君が俺のことを気にしてくれているのが堪らなくて、うん……ごめんね?」
「?」

「食事の時も、起きた瞬間も、眠りに落ちる時も、夢の中でも、最上さんが俺の事を思ってくれると嬉しい。少なくとも俺はそうだから……もうずっと、君を好きになってから何をしても頭から離れないんだ。だからと言って、君もそうなってくれると良いと思うのは自分のわがままだとは思うんだけど……」

思わず「お仕事中もですか?」と聞くと「演技中はさすがに違うけど、合間に相手役が君ならどんな感じだろうと想像はするよ」とあっさり答える。
それらを蓮は照れる風でもなく真摯な様子で静かにキョーコに伝えてくるものだから、自分を本当に思ってくれる事がスポンジに水が染み込むよりも容易く入ってきた。
だからつられても仕方が無かったのか、キョーコから思わず言葉が零れる。

「それなら私も同じです……」
「え!?」
「パリに来てから、いえ、その前からずっと敦賀さんのことを考えています」

その言葉に蓮は目を見開き驚いた表情をする。
『その前から』とはどの程度前からの事なのだろうか?自分が想いを伝えてからなのだろうか?
ラブミー部員であるキョーコが言葉を曲解することなく受け止めてくれた時、蓮はその先の展開を抜きにしても本当に嬉しかった。
そこから数えて長い期間では無いがまっすぐに愛を伝えてきたつもりだし、『その前から』がそれを指すのなら理解できる。
しかし、キョーコが『ずっと』と言うのなら、それはもう少し以前からの事の様な気がするのだ。
だとしたら、恋に溺れる男としてはこの上なく嬉しい事実に違いなく……

「あの……敦賀さん……お顔赤いですよ?」

人というものは、指摘をされると益々恥ずかしくなるという側面もある。
よって、困った蓮は赤い顔のままプイッと横にして、キョーコの方を伺うように視線だけ向けると「君が嬉しいことを言ってくれるから……」と言いながら拗ねた。
昨日、橋の上でも似たような表情は見たけど、その時よりもキョーコの心臓が確実に跳ねあがる。

――な、なんて、可愛いのかしら!

なぜなら目の前にいるこの人はあの『敦賀蓮』で、断じてこんな表情でプイッとするキャラでは無い。
だからこそのギャップで、これ以上ないほど威力を発揮するのだ。

キョーコは思わず席を立ち、目の前の大きな身体をぎゅーぎゅーと抱きしめたい衝動に駆られるのだが、頭の片隅でさすがにそれは拙いと腕組みをして自分を押さえつける。

――拙いわ!思わず無意識に私はいったい何を?敦賀さん、あなたはなんて恐ろしい人なんですか!?

魅力は魔力だ。
魅入られると魔法に掛けられているかのように、うっかりフラフラ思いもよらない行動に出てしまう事になる。

「えっと……最上さん!?」
「え!?」
「どうかしたの?」

先ほどの話と同様に、人というものは指摘をされると(以下、略)

「つ、敦賀さんが悪いんですからね!?」
「え!?最上さん?」
「だって……そ、そんな可愛い反応を(ごにょごにょ……)も、もう、知りません!」

これまた同様にプイッと顔を背けてチラリと頬を染めながら蓮の方を伺うものだから、その可愛らしさに思わず喉がゴクリと鳴るのも仕方が無く、

「……ねえ?可愛いから抱きしめてもいい?」
「だから、なんであなたはそんなにストレートに言うんですか!?」

先ほどの自分の感情も見透かされた様で、キョーコは思わず声を上げてしまうのだった。

h_14.jpg

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今回の画像は特に本文に関係ないですけど、パリの風景ということで^^(トイデジで撮影)

コメント

どちらも、凄くかわいいわ~。
顔を赤らめて照れている姿想像しちゃいました。どちらの姿もお互いにノックアウトでしょうね。

コメントありがとうございます。
幸せでラブい二人を目指しております♪
お互いに何度も惚れると良いと思うのです^^

>水助さん

うふふ、コメントどうもありがとうございます♪
あの二人はまず役者だと思うので、相手役が…という部分は外せない感情かなと。
蓮のストレートな愛情表現は確かにズルイですよね。
というか、敦賀蓮というだけでズルイ。
存在自体が罪な男なのに、さらにデコレーションしているみたいなものですよ!?
ケーキで例えるなら、一般男性がショートケーキなら敦賀さんはウェディングケーキぐらいですよね!?


……いかん、何か激しく脱線した気がw