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お客様は神様です。 12 (なんてことない非日常・ユンまんまさん )

彼女は・・・今、なんと言ったのだろうか・・・・・・。


「・・・・え?・・」


蓮は、小さく笑ったまま今の言葉をもう一度聞き返していた。


「・・・私には、夫がいます・・・・と、言っても結婚していませんが・・・」


「え?結婚していないのに夫??」


ただでさえ混乱してる頭の中に、さらに謎の文を投げ入れられ蓮は頭を抱えた。


「・・・少し・・複雑なのですが・・・・・昨日のお客様が仰っていた事覚えていますか?」


「え?」


「私が、松乃園の若女将だと・・」


「ああ・・・そういえば・・」


「・・・忘れてらっしゃったんですか?」


「え!?・・・いや・・・あの時は、感情に突き動かされていたから・・・」


モゴモゴと口ごもる蓮に、小さく笑みを見せたキョーコは何かを吹っ切ったように話を続けた。


「私は、松乃園の一人息子と結婚することを条件に若女将になる・・予定だったんです」


「よ・・てい?」


「・・・はい・・・・・・彼とは・・幼馴染で・・幼い頃からよくそこに出入りしていた私は昔から若女将になるための修行とは気がつかずに見よう見真似で働いていました・・意識する前には既に旅館業で働くこと以外私にできることはなく、私の人生には彼との結婚も当たり前のことと捕らえていました・・・」


キョーコの独白に、蓮は黙って聞き入るしかなかった。


「若女将の襲名の日までは・・・」


キョーコは、その日のことを思い出したのか苦痛に耐えるかのように眉根をぎゅうっと寄せきちんと膝に置かれていた両手にも力を入れ始めた。


「あの日・・・襲名披露の茶席を終え、母屋に戻ってきた私と女将さんにアイツ・・・ショータローは・・・私と結婚などしないと言い放ち出て行きました・・・元々、人に決められたことをするのは嫌いな人でしたし・・・私が想っている感情の一ミリも想い返しているなんて感じたこともありませんでしたから・・・当然の出来事といえばそうなのかもしれません・・・それでも、今までさして反対している態度も見せなかった唯一の跡取り息子が出て行ってしまっては女将さんたちもどうすることもできず・・・結婚も、若女将襲名も保留のままになっています・・・」


「保留・・・・」


「・・・・はい・・ですから・・・私には敦賀さんに想われるような資格は無いんです」


「・・・ココにはどうして?」


「・・・・一つは・・居た堪れなかったから・・・みんながすごく優しくて・・それが辛くて・・・もう一つは、私に旅館業で働く以外のことが何かできないかと思って・・・本当はLMEコーポレーションの事務職を受けたのですが・・なぜか身バレしてしまって・・・こっちに採用されたんです・・・」


本当に何でバレタのか・・・と、不思議そうに首を傾げるキョーコの後ろでローリィが余裕の笑みを溢している姿を蓮は頭の中で容易に思い描けた。


「と・・とにかく・・・君は、全てをふっきってココに来たんだろう?」


「・・・そう・・・だと、思っていました・・・でも結局は旅館業と同じホテルで働き、失敗したフォローも今までと同じことをしたまでです・・・・私は・・何も変われていなかった・・・」


「それは・・・今も、その元婚約者の男を想っているというところに繋がるの?」


「・・・・・言いたいことは山のようにあります・・・けれど・・それが恋愛感情からくるものなのかは・・・顔を見ないとわかりません・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


「だから・・・敦賀さんの想いに答えることは・・・」


「待つ・・・って言ったら?」


「へ?」


「君が心の整理をつけて、新たに誰かと恋愛してもいいかな?って思えるようになるまで待つと言ったら?」


「!?そ、そんなの・・・どれほど先になるか・・・それに・・・敦賀さんほどの方がどうして私なんかと!?先程の百瀬さんとご一緒の時の方がお似合いのカップルに見えました」


「・・・それは・・ヤキモチ?」


「ち、違いますっ」


「少しは俺にも望みある?」


「つ、敦賀さんってそんなキャラだったんですか?!」


「男は好きな女性には酷く貪欲になるものなんだよ・・・特に、初めてする本気の恋・・だとね?」


「!!」


ウィンクする蓮にキョーコは一気に真っ赤になった。


「そ、そんな容姿の男性にその言葉はずるいですっ!!」


「ずるいって・・・・」


すっかり二人の間にあった緊迫した空気は無くなり、以前よりも柔和になった。
ただし、他人を寄せ付けない甘い空気を孕んでいることを本人たちは無自覚だったため戻ってきた百瀬がショックを受けていることに気づくはずも無かったのだった。





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コメント

百瀬さんとの「デートのような仕事」はどうするんでしょうね。

蓮さん、今日、キョコさんと話す気満々できたなら、もともとそんな約束しちゃ駄目でしょうぉ。(;´Д`)ノ!

キョコちゃんの現状を聞いても待つことを選択している蓮様かっこいいわぁ。
百瀬さんも叶わないって思っているんでしょうね。

この先も馬鹿尚何かやらかさないと良いんですがね。

>魔人さん
「デートのような仕事」に気づきもしないここの蓮さんは軽く(?)鈍いお方です。
自分の気持ちも、自分で口にしないと分からないぐらい(笑)

なので、キョコちゃんとはまともに話せるのか!?というのもあり、一生懸命な百瀬さんについ了承しちゃったおバカなフェミニスト君ですorz
見放さないでっ

>美音さん
そこらへんは大人です・・いや・・大人・・なのか?(爆)
とにかく諦め悪く粘るつもりです。
百瀬さんは密かにダイッショクッ中です。

悪魔なフェミニストも痛いですが、彼はこの先何をしでかしてくれるんでしょうねwww
存分な怒り場所になるように頑張ります!!←頑張る方向が・・・