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お客様は神様です。 11 (なんてことない非日常・ユンまんまさん )

「あのっ!これに他意はなくって・・そのっLME hotelの周辺にあるレジャー施設をリサーチしておくのも良いかと思いましてっ」

 真っ赤になって必死に訴える百瀬に、始め呆気に取られていた蓮だったがクスリと笑みをもらした。


「そうだね・・リサーチは必要だね・・・行こうか、一緒に」


チケットを百瀬の手から一枚引き抜いて、そう返してくれた蓮に百瀬は驚きの表情をした後嬉しそうに大きく頷いた。


「じゃあ、明日10時に打ち合わせの約束を取り付けているから君も一緒に行ってみる?周辺をリサーチしたのにホテルの中を知らない添乗員じゃダメだろ?」


イタズラっぽくウィンクしながら、チケットを振る蓮に百瀬は笑顔で大きく頷いたのだった。



************



「最上さん、昨日はお世話になりました」


「・・・いえ、こちらこそ色々助けていただきまして・・ありがとうございました」


約束通り現われた蓮は、昨夜の様子など微塵も感じさせないで仕事と割り切りキョーコと向かい合っていた。

キョーコもあの笑顔ではなく、いつもに近い表情で蓮と接することができ内心ほっとしていた。


「あの・・・こちらの方は?」


蓮の後ろに見え隠れする百瀬の姿にキョーコが訊ねると、百瀬が蓮の隣に一歩足を出した。


「百瀬 逸美君、うちの社員だ」


「はじめまして、百瀬です・・・社さんや敦賀主任からお話しを伺っています・・チーフコンシュルジュの最上さん・・・ですよね?」


可愛らしい笑顔を見せ、握手を求める手を差し出す百瀬の姿にキョーコも笑顔を作りその手を握った。


「はじめまして・・・どんな噂をされているのか少々心配ですが・・これからもよろしくお願い致します」


キョーコの笑顔に百瀬は和む笑いを交え、蓮を振り仰いだ。


「こんな素敵なコンシュルジュさんがいらっしゃるから、社さんも主任もここに入り浸っているんじゃないんですか?」


「そんなこと・・・ないよ?」


「その間があやしいですよ~」


百瀬の質問に曖昧に笑って返す蓮の姿を、キョーコは見つめた。

自分よりもずっと並んでいて様になる二人が、会社からここまで歩いてきた様子や普段から仲良く話している姿が容易に想像できて重く沈む心臓の奥に気がつかないように笑顔でロビーのソファーに案内した。


「仲がいいんですね?そう言えば社さんも気さくな方ですよね?」


「社さんは本当に人当たりが良いですが、怒らせると敦賀主任よりも怖いんですよ?」


「ええ!?そうは見えないです」


「・・・それは暗に俺が怖いといっているのかな?」


「「めっ滅相もない」」


百瀬とキョーコが同時に手をぶんぶん振ると、三人に笑いが起こった。

それをきっかけに今日の打ち合わせは、和やかに進んだのだった。


「それじゃあ・・・今日はこの辺で・・・」


キョーコが資料を整理しながらそう言うと、百瀬は辺りをキョロキョロし始めた。


「あ・・すみません・・・私もホテル内を確認しても良いですか?」


「ええ、もちろんです」


「俺も一緒に行こうか?」


「いえ、一人で大丈夫です」


百瀬は、スタスタとすっかりオープンを待つだけとなったホテル内に姿を消した。

途端、先程までの和やかな雰囲気が一変して一触即発のような空気がキョーコと蓮の間に流れた。


「・・・あ・・・コーヒーのおかわり・・持ってきます・・・」


キョーコが、蓮の顔を見ないように立ち上がったのだがその手首を蓮は咄嗟に掴んでいた。


「最上さん・・座って・・少し、話をしよう」


「は、離して下さい・・・座り・・ますから・・・」


掻き消えそうな声でキョーコが訴えると、蓮は渋々その手を離した。
居た堪れない表情でキョーコが座りなおすと、蓮はじっとキョーコを見つめた。


「君の事が・・頭から離れない」


「っつ!きょ・・今日はっ・・お仕事の話で・・」


「ごめん・・・こうしないと君が素直に話を聞いてくれないと思ったから・・・」


蓮の言葉にキョーコはそのまま押し黙り、俯いた。


「昨日は・・ふられた事を素直に受け止めて君への想いを諦めようと思った・・・でも、こんな風に誰かを思って胸が痛くなったことは初めてで・・・仕事も手につかなくなるなんて思わなかった・・・」


「・・・・・・・へ?・・・今・・なんと?」


蓮の話を聞いていたキョーコは、数秒の間の後目を見開いて頭を上げた。


「だから・・・仕事も手に・・」


「そうじゃなくて・・・初めてって・・・敦賀さん・・誰かを想って胸が痛くなったことが今まで無いんですか!?」


「・・・・・普通、そうじゃないの?」


「一体、今までどんな恋愛をされてきたんですか・・・・」


「どんなって・・・ちゃんと好きになった人としてきたよ?・・ただ、好きだなあ・・と思ったくらいに相手から告白されたりしてそのまま付き合って・・・気がついたら『心の距離が違う』とか言われてそのまま別れてるかな?」


「・・・・・・・・・それ・・本当に好きだったんですか?」


じと・・・っとした視線を投げかけるキョーコに、蓮は焦ったように視線をうろうろと彷徨わせた。


「だ、だから・・それが普通だと思っていたんだよ・・・君に・・・こんな感情を抱くまでは・・・」


「・・・・・・・・・」


蓮の表情で嘘を付いている様子など微塵も感じないことに、キョーコは眉間に皺を寄せた。


(・・・いっそ・・・酷い遊び人だったら、簡単に断れただろうに・・・・)


いつも余裕の態度で接してきて、たまに頭にきたりしていがみ合っているやり取りが楽しくてその関係を崩したくないという思いもあった。
だから、昨夜のような返事をして告白そのものを無かったかのように振舞ってみた。

どう考えても女性慣れしていて、一時の感情に流されて告白してしまっただけだろうと思っていたのに・・・。

目の前でまだ、どんだけキョーコへの感情で自分らしくない行動を取ったかを切々と語る蓮にキョーコは諦めに近い表情でふっと苦笑した。


「・・・・敦賀さん・・・・私・・お話しておかなきゃならないことがあります・・・」


「ん?」


ようやくちゃんとした返事がもらえるのではないかと期待した蓮の眼差しに、キョーコは一瞬躊躇ったが意を決して口を開いた。


「私には・・・夫がいます」




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コメント

きゃ~!衝撃の告白の所で、待て次号!
この蓮さんどんな反応をするの!?
あああ、ドキドキします~

え~~~~~~~~。

夫って、あの馬鹿?しかいないですよね。
愛の無い結婚したってことかしら?
向こうには利益が無ければしそうにないはず・・・。

お二人とも驚いていただきありがとうございます!

そうです、待て次号ですw

まあ、蓮さんは・・・うん。瀕死でしょうねw
アイツのことも少し複雑ですが、今後出てくる予定なので(嫌?)次号からお楽しみに~ww

ぼのさん

驚いていただきありがとうございます!

展開を楽しんでいただいて嬉しいです♪

待て次号!!で、よろしくお願い致しますw