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Operetta 1 (Tempo2.0・sunny)

※先日のパリ旅行からの妄想です。(ちょうどパリコレも開催中だったので)
 ホテルを拠点に動き、現地の写真とともに…
(3/19 第一話を当企画BLOGから修正し、頂いたコメントと共にこちらに移動)


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「は~、やっと着いた」

キョーコがシャルル・ド・ゴール国際空港に降り立ったのは、今からおよそ1時間ほど前。
空港には送迎の者が待っていて、案内された車に乗り込みここまで来た。
車は日本人にも馴染みのあるこの国のメーカーのもので、運転手は黒いコートのよく似合うフランス人の中年の男性に若い案内役の日本人女性。
女性から今後のスケジュールについての話を聞きながら市街地に移動する。
夕方という時間のせいか少し渋滞に巻き込まれたけど、着いたばかりの異国の風景を早速車窓から楽しんだ。

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「では、明日また迎えに来ますからよろしくお願いします」
「はい。分かりました」

ホテルの場所はサンジェルマン・デ・プレ教会に近く、あのオルセー美術館やルーブルにだって歩いていける便利な場所にある。
地下鉄が目の前、スーパーも近く、飲食店も多い。観光客にはその辺りも嬉しいポイントだ。
重いスーツケースを転がしてフロントまで行き、まずはチェックインをする。
ホテルは最上級とまではいかないがそれなりのランクのもので、この場にいる他の宿泊客も品がよく落ち着いた雰囲気。
スタッフもとても感じが良く、その対応に心地良いこれからの滞在を約束された気持ちになる。
フランスと言ってもこのホテルでは英語は難なく通じるのだが、キョーコが簡単なフランス語を駆使して会話をすると、一生懸命な様子に彼らから思わず笑みがこぼれた。

――フランス語もう少し勉強すれば良かったかしら?

今回は急な仕事を受けての旅であった為、少し勉強不足だとキョーコは思う。
英語もそうだが、語学を学ぶことは嫌いではない。
旅行に使うぐらいの会話なら出来るのだけど、やるからにはとことんのキョーコにはそれでは少し弱いと感じるのだ。

――演技で使う事だって無くはないんだもの

そこで、そういえば某事務所の先輩は以前に出ていた映画で、フランス語を流暢に話していた事をふと思い出す。

――きっと、敦賀さんならこんな場面もスマートにこなすのね

この場には今はいない人。
頭にその姿を思い浮かべながら、キョーコは少し思考の世界に入る。

――敦賀さんは今頃……

この場にはいない…が、実は敦賀蓮の居場所はこのパリの空の下だ。
ちょうどパリコレが開催されているという事で、それに出る為にキョーコよりも先に来仏している。
パリコレというと大まかな知識だけでも、凄いという印象は誰もが持っている事だろう。
日本人の売れっ子俳優である彼がそれに出るというだけで、それは芸能界のトップニュースだ。
もちろん彼は、元々一流ブランドのモデルでもある訳だけど……。

――やっぱり敦賀さんは凄いなあ

キョーコはランウェイを歩く敦賀蓮を、直接その目で見たことがある訳ではない。
しかし、目を閉じてそれを想像するだけで、存在感を見せ付けられる気がする。
堂々たる凛としたその美しさは、その場の人々を根こそぎ魅了するに違いない。

――高嶺の花ってあの人の事をいうのよね

いつまでたってもきっと手が届かない。
それでも自分は、愚かなことに少しでもそれに近づきたいと思っているのだ。
キョーコはそんな事を思いながら、上に向かって手を伸ばした。

……が、

「Mademoiselle?」
「う、Oui!?

手を上に上げたキョーコがはっとして我に返ると、目の前に少し不思議そうな顔でキー差しだすフロントマン。

――え!?や、やだ!ここまだフロント!?

あわててルームキーを受け取ると「Merci!」とお礼を言って、恥ずかしさのあまり頬を染めながら、宿泊する部屋に向かうべくそそくさとエレベーターに乗り込んだ。


目的の階に着いたことをエレベーターが告げると、そこから降りて部屋を探す。

「えっと…302…あ、ここね」

キョーコの手にあるルームキーは電子キーで、日本ではお目にかからないタイプのもの。
こういったものを見ても、この場所が別の国だと感じる。

カチャッ……

そーっとドアを開け、部屋の中を見る。

「うわ~!凄くいい感じ」

部屋自体に大げさな華やかさは無く、調度品はシンプルかつ機能的。
それでもセンスはとても良く、キョーコはすぐに気に入った。
パリのホテルの部屋は狭いと聞いていたのだが、思っていたよりも広い。
そして、その中で存在感があるのはやはりこれ。

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「ベッドが二つ…」

一人で宿泊のはずなのにベッドがツインなのは、シングルの部屋が取れなかったからだと説明を受けている。
……が、そんな事よりもキョーコは別のことを考えていた。

「なんだか、あの時を思い出すなあ」

二つのベッドを前にして、キョーコはホテルで生活を送っていた時の事を頭に浮かべる。
あの時は一人では無かった。
偽りの兄妹ではあったけど、甘えて甘やかされて、とても自分は幸せだったと思う。
思い出すと胸の奥が締め付けられそうになるけれど、あれはとても大切な時間だった。
ギュッと抱きしめられた体温までうっかり思い出したところで、慌てて思考にブレーキをかける。

「やだ、なんか、私ってなんで敦賀さんの事ばかり!?あ~!もう!なんで~~~!?」

異国に来たというのに色んなものが蓮に繋がる自分が恥ずかしくて、思わずベッドにボフン!とダイブしたキョーコは、それだけでは足りずにゴロゴロと転がりまわる。
自分はどこまであの男に惹かれているのかと、思い知らされるようで顔が熱い。
しばらくしてやっと落ち着いたらしいキョーコは、ガバッ!と勢いをつけてベッドから飛び起きる。

「そんな事よりもお風呂よ!旅の疲れを癒して明日からの仕事に備えるんだから!」

そして、歩を進める。

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向かった先のバスルームは、床暖房で足元からじんわりと暖かい。
バスタブは快適な大きさで、可動式の仕切りガラスがある。
キョーコはそこにソープを入れ、勢いよくお湯を出した。
そして、モコモコと出来上がる泡をしばらく見ていたかと思うと、顔を真っ赤にして再びベッドまで戻り、そこでゴロゴロしながら自分に向かって突っ込むのだ。

「あああ~~~~!!!!!なんで、そこで泡風呂にしようと思ったのよ、キョーコ~~~~!!!」

思い出したのは、泡風呂もお似合いな均整のとれたあの身体。
引き締まった筋肉の上をすべる水滴。水が滴るいい男を地でいく敦賀蓮。

「違う!違う!あれは敦賀さんだけど、兄さんだったんだから~~!!!」

次々と思い出すヒール兄妹生活の危ない脳内映像はノンストップ。
ベッド上でのあの事件まで昨日の事の様に再生され、もはや声にもならずに悶える。
涙を浮かべて一人恥ずかしがるキョーコは、自分を惑わせる男に小さな怒りをぶつけた。

「こんなに思い出しちゃうのは、全部、全部、敦賀さんのせいなんですからね~~~!!!」

そんな事を声に出してみても、頭の中の半裸状態のカインはついに敦賀蓮の姿に変わり、最終的には悩殺笑顔で自分に迫ってきた。
それは自分の中の一番新しい蓮の記憶。
ちょうど来仏前に会った時に、蓮はある言葉と共にその笑顔を至近距離でキョーコに向けたのだ。


(今度会った時に答えを聞かせて?)


まさか、その『今度』がこんなに早くやってくるとは思わなかったキョーコは、心の準備もまだ出来ないままそれを迎えようとしていた。


「明日、どんな顔をして会ったらいいのよ~~~~!?」


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私の好みによりギリギリ付き合ってない設定ですw
続きをという嬉しい声を頂きましたので、こちらで少しの間連載いたします。
お付き合いくださいませ^^

コメント

うっぉー!
なんて素敵な世界!
写真つきのお話ってこれまた情緒があって素敵ですね!

っと、興奮のあまりご挨拶忘れました、えみりです。
さにさんの素敵旅行記がキョコたん視点で、更にはドキドキの展開に行っちゃうわけですね…!美味しすぎますっ!グッ!(親指立て)

両片想い大好物なので設定にもきゅんきゅんします(*´ω`*)
続きもお待ちしております!ヾ(*´∀`*)ノ ジュテームジュテーム

>えみりさん

わ~い♪どうもありがとうございます♪
実体験混ぜるのってどうにも妙に恥ずかしいんですが、使うのは観光で得た知識だけなので思い切って妄想文にしてみました^^
だって現地ではパリコレやってたし、帰ってきたらテレビで芸能人がルーブルに行く番組はやってるし、もう色々混ぜてやるしかないですよねw
折角なので写真つきで。少しの間お付き合いくださいませ~。

たぶん、タイトルに相応しくドタバタ展開ですw

以下、拍手からのレスです^^
どうもありがとうございます。
お蔭様で連載となりました~。 (←どう考えても、自分の首をきゅーきゅー絞めてるw)

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>ちなぞさん

切望どうもありがとうございますw
そこまで言って頂けるのなら、このさにー、無い文才搾り出して書かせて頂きましょう!
パリコレ…衣装どうしましょうか?
伊○谷友介さんに負けないぐらいの格好でなきゃ駄目ですかね?www
普通にかっこいいでいくか、度肝をぬかれる系でいくか、これは実に悩むところですぞw(←お願いだから普通にしてあげて~~!)
写真もパリの匂いが感じられるように入れていきますね^^
しかし、どう考えても行った時にパリコレをやってるなんて、妄想しろよと言われてるみたいなものですよね?w

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>水助さん

わ~い!楽しんでいただきありがとうございます^^
続きも是非といって下さって、さにーはすっかりその気ですw
そうそう!パリといえばやっぱりのだめですよね。
でも、これが案外スキビでもいけるんだな。と現地で観光しながらしみじみ。
キョコちゃん、かわいかったですか?うふふ♪よかったです。
私の書く文章は敦賀さんがすぐにグルグルと考えちゃうんですけど、今回はできるだけキョコちゃんにグルグルしてもらおうかな?と思っておりますw