心ほどいて。1 side kyoko (海は凪ぐのに。・honeyさん)
外の光が強くなりはじめる頃、有明の月は淡くなりはじめる。
レースのカーテン越しの柔らかな光が漏れてくる。
豪奢なドレープカーテンレースの模様を通した影が二人の休む場所を包む。
ここは都内の超高級ホテルの一室。
歴史ある調度品の配された、いわゆるVIPルームだ。
ありがたいことに、彼の休暇が取れ、昨夜遅くここで合流することができた。
久しぶりに逢う彼はひどく疲れていて、痩せて見えた。
ふたりで生きていこうと誓ってから、彼はあまり、自分のことを話さなくなった。
『俺のことを嫌いになってしまうかもしれないよ』