心ほどいて。2 side ren (海は凪ぐのに。・honeyさん)
淡い桜色のスーツが君の肌の色を明るく見せる。
君は俺が贈ったハートシェイプのダイヤモンドのエンゲージリングを薬指にはめて、はにかんでいる。
時折それを眺めては触って頬を緩ませている。
淡い桜色のスーツが君の肌の色を明るく見せる。
君は俺が贈ったハートシェイプのダイヤモンドのエンゲージリングを薬指にはめて、はにかんでいる。
時折それを眺めては触って頬を緩ませている。
外の光が強くなりはじめる頃、有明の月は淡くなりはじめる。
レースのカーテン越しの柔らかな光が漏れてくる。
豪奢なドレープカーテンレースの模様を通した影が二人の休む場所を包む。
ここは都内の超高級ホテルの一室。
歴史ある調度品の配された、いわゆるVIPルームだ。
ありがたいことに、彼の休暇が取れ、昨夜遅くここで合流することができた。
久しぶりに逢う彼はひどく疲れていて、痩せて見えた。
ふたりで生きていこうと誓ってから、彼はあまり、自分のことを話さなくなった。
『俺のことを嫌いになってしまうかもしれないよ』
二人は無理をお願いしたメニューで、軽めではあるが一流の食事を楽しい会話と共に味わった。
そして今夜の次の予定、教会で神父との打ち合わせに向かった。
隣と言うほどではないが、車で行くには近いことで二人は歩いて教会に向かった。
「夜遅くの打ち合わせになって、神父様に申し訳ないわ」
教会の信者ともなれば遅くに懺悔に現れる者もいるが、神父達の中でも交代でその相手を務める。
だが、今日の打ち合わせには式に立ち会って下さる一番位の高い神父だとキョーコは訊いていた。クリスチャンではないキョーコは詳しくは知らないが、位の高い低いは関係なく遅くまで待たせることが心苦しかった。
「海の音は余りしないのね」
キョーコは耳を澄ましてみるが、海風だろうか。強い風が周りの木々を揺らす音だけで波の音は聞こえなかった。
「高台で少し離れているし、静かな波なら聞こえないんじゃないかな?」
「朝の景色が楽しみね…」
「キョーコは早起きするつもり?」
「素敵な景色は優しいし、心の栄養にもなるのよ。何度も見える訳じゃないから、見ておきたいわ」
重厚な扉をノックした蓮は、中から返事があるとその扉をゆっくりと開けた。
誕生日を祝ってくれた気持ちがうれしくて。
4日後の女の子の告白に利用されるイベントデーも君の時間を独占できることがうれしくて。
君が愛を否定し避けていることも知っている。いつも君がこの日に用意するのはお世話になっている人たちへの感謝のチョコレート。
なぜだか俺にはチョコではなく別のもの。特別扱い…そう自惚れたい。
でも世間一般にはこの日はチョコレートに想いをこめて。
君からチョコレートをもらってみたい。子供っぽい我儘だとは思うけれど、今年はそのチャンスに恵まれた。
愛する兄の要求ならば、この妹は断るわけがない。